不調を健康のバロメーターに~ばね指

仕事

近所でマイクロ法人の代表として精力的に仕事をしている60歳代女性。

以前、お母さんとご主人は治療したことがあるので面識はありましたが本人と話をしたことはありませんでした。

ある日の夕方、看板をしまおうと外で片付けをしていたら帰宅途中らしい彼女が通りかかり近付いて来ました。

何かと思ったら右手を見せ中指を動かして「以前から指が引っかかるんですけど鍼で何とかなりませんか」と質問されました。

彼女はばね指で悩んでいたのです。

整形外科を受診したのですが医師に注射の方が痛いですよと言われどうしたらいいものかと僕に声を掛けたのです。

正直、治療を勧めても良かったのですが、指の酷使は現状のままでの治療は成績が思わしくないことは実感しています。

彼女の仕事がとても忙しいことは知っていました。

特にこういった忙しく仕事で手指を使い続けて発症してから時間が経っているばね指は、加齢と繰り返される炎症で腱や腱鞘が肥厚していることで特に成績が悪かったのです。

そこでまずお仕事のシフトダウン、ペースダウンを提案しました。

人間は弱いもので体のどこか一か所でも調子が悪くてもそれですべての調子が狂いパフォーマンスが下がり気持ちも落ち込みます。

たった一か所の虫歯の鈍痛でも、片方の目がほんの少しゴロゴロするだけでも一気に気持ちに影響してしまうものなのです。

どこかに不調や痛みが出ているということは体の中でそこが何らかの理由で不具合が起こっている部位であり、負荷に耐えられずに壊れつつあることを持ち主に教えてくれているのだと考えることが出来ます。

この場合、仕事のシフトダウン、安静は自らできる最も簡便で確実な治療法なのです。

今後、痛みや引っ掛かりが出そうになったら、出たら無理はしない、その作業はそこまでと判断すること。

指に限らず手、肘、肩に気をかける。温めて楽か、冷やして楽かそのどちらもかを確かめ楽に感じる方を実践すること。

また暇を見つけては手指のその周辺のストレッチを苦痛のない範囲でするように指示しました。

その後しばらくして朝、看板を出しているとまた通りかかり「冷やしてみたら少し楽になりました」と笑顔で答えました。しかしながらその肘の外側に湿布が貼ってありました。

これはたぶん「外側上顆炎」でしょう。手指を使う人が良く訴える痛みです。

手の甲を上にして人差し指と中指を交互に上下に動かすと僅かに肘の近くの筋肉が動くのが判ると思います。

この部位(腱の付着部)の痛みも手指の酷使に関係しているのです。

どのような経緯なのかは尋ねる暇もありませんでしたがやはりついつい無理をしてしまうのかもしれません。

もしくは本人はそれ程じゃないと思っていても肘と手指(の腱、腱鞘)にとって蓄積された負荷からすると限界を超えてしまっているということなのかもしれません。

そこで右肩、前腕と体のメンテナンスと体全体のケアの意識を右肘~手指を基本として考えることを提案しました。

身体や気持ちはまだまだ余裕があるからやりすぎてしまう訳で、弱いところを体調の基準に仕事や生活をしていれば無理をしすぎることはありません。

一病息災。体の不調を逆手にとって健康管理に生かす。

これが長い目で見ると健康管理としては最も良い選択であり、身体全体の意識改革に寄与するのではないかと思っています。

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