よく噛んで、感謝

日常生活

腰痛が主訴で鍼灸院を訪れる人は多いのですが、腰痛と言っても実に様々な症状、訴えがあります。そしてその訴えと同じようにその原因もまた様々な十人十色で、更にそうなるまでのそれぞれの経過が存在します。

40代女性、肩こりと背中の張りで来院しました。特に月経前に胃が痛くなり、次いで腰も痛くなりやすいとのこと。背中を触ってみると左の背中から腰まで張りと痛みがつながって存在していました。会社の検診で受けた胃の内視鏡で「少し荒れている」と言われていました。

幸いピロリ菌は陰性でしたが逆にこういった女性ホルモンと関連するような胃痛、背中の張りは自律神経の影響が大きいため、日頃の生活習慣の改善が大きな鍵を握ります。

他の30代女性でも腰痛に限らず背中の下(経穴でいうと消化器領域)に反応が出ていることが多いのです。食事に関して尋ねても、忙しくて片手間で済ませたり、折角ゆっくり食べられるはずの夕食にしても当たり前のようにテレビを見ながら、動画を見ながらという人が多いことに驚きます。

食事のついでに何かをするというのが当たり前のような現代人なのですが、そのような食事のスタイルが食べ過ぎたり胃がもたれたり、自覚症状を感じなくても知らず知らずに消化器に負担になっているということなのです。

厄介なのは、大半の人がそれすら感じることもなしに(感じる余裕もなく)生活していることです。

『私たちは自分が嗅いでいるものや味わっているのに注意を払う能力を失ってしまった。その代わりスマートフォンやコンピュータに心を奪われている。通りの先で起こっていることよりもサイバースペースで起こっていることの方にもっと関心を払う。スイスにいるいとこと話すのは、かつてないほど簡単になったが朝の食卓で配偶者と話すのは難しくなった。彼は私ではなくスマートフォンを絶えず見ているからだ。』

『今日の豊かな社会の人にはそれほど鋭い感覚は必要としない。スマートフォンで電子メールを送りながらスーパーマーケットの通路を歩き回り、保健所などがすべて品質を監督している無数の総菜から好きなものを買うことができる。だが何を選んだにしても、テレビの画面の前で、メールをチェックしたり番組を見たりしながら味はろくに注意も払わず、せかせかとお腹に入れることになりかねない。』  (「 21 Lessons 」 ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房新社 5章 コミュニティより)

今一度、テレビを消して、牛さんや鶏さんに「 いただきます 」と手を合わせ感謝の気持ちで食事をしてみてはいかがでしょうか。生姜焼きで口は動いていても気持ちはテレビでは豚さんも浮かばれません。

人が大漁だと喜んでいる海の下では大きなお弔いという金子みすゞの詩がありますが、そういうありがとうございます、いただきますのキモチがないと、日々のあたふたでやれ次、それ次と押し流されていくうちにあっという間の24時間です。

それで仕事もでき、生活も充実して上手く回っているうちは、もしくは体力のある、消化力のある若いうちはいいのかもしれませんが、少しずつストレスの負荷が強くなるとともに、また歳を重ねると共に、無理が積み重なってそれは徐々に、微妙に歪みや違和感のような感覚として出現します。

勿論、血液検査がメインの検診では何の問題も指摘されませんし街のクリニックに行って訴えても考えすぎですと言われ、納得いかないと大きな病院の紹介状を渡され、異常なしで更に訴えるとアブない奴と思われ抗不安薬などを出されるのがオチです。

しかし本人は感じているのです。微妙な背中の張りだったり、もっと微妙なふわっとした眩暈だったり、モワっとした頭痛だったり・・・。

そのような時は、入浴、睡眠、瞑想か、一旦立ち止まって今一度生活を見直して気持ちと身体をリセットしてみてください。

時間が取れなくても、気付いたその時々でゆっくり静かにたった一分間の深呼吸でも構いません。

それでもダメなら客観的に軌道修正する選択肢として鍼灸治療もあります。

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