頚椎症の低侵襲手術

医療トピックス

仕事柄、頚椎や腰椎の手術後の患者さんによく遭遇しますが
鍼灸治療に来るくらいですから手術に関する満足度はあまり高くありません。

高齢化に伴い症例数も多い膝関節の人工関節全置換術を受けた患者さんの満足度に比べそれはかなり低いものだと感じていました。
膝関節に比べ脊髄から出る神経根症状に係わる為にかなり微妙な領域だからと推測されます。

よく病院の症例数等の統計が出ていることがありますが、患者さんの満足度も発表してほしいと思っていたくらいです。
なぜなら、私の周りには当然「満足していない」患者さんしか存在しなかったからです。

頸椎の手術でいえば大きな傷が後頚部に痛々しく、筋肉も損傷し可動域も落ち術後は身体ごと振り返るような感じでした。
骨盤辺り(ヤコビー線)を触ると自家腸骨の移植の為に凹みがあったりしました。

そんななか、当院に通われていた頸椎ヘルニアの40代の患者さんが4か月のブランクがあって来院しました。
前回もなかなか鍼灸治療では症状が治まらず、スマホで本人のMRI画像を見せてもらいながら
「オペしなきゃいけないかなぁ」
「神経根症のうちは勧めませんが脊髄症になったら考えなくては」
という話をしていたのです。

その後、脊髄症(膀胱症状、下肢症状)が出現して手術をしたとのこと。
しかし、ここですと頚もとを指しますが全く跡が判らないくらい。頚の皺に合わせて切開の跡。
前方(仰臥位)からのアプローチ、削った骨組織に詰め物を入れなくても問題ない、改善しないなら再オペ可能とのこと。

2泊3日で自分で車を運転して浜松から帰ってきたと。
脊髄症状はもちろん消失で、治療側の神経根症も以前の2割程度との事。

患者さんに詳しく話を聞いて治療後じっくりとHPを見ました。
脳神経外科の医師がやっている顕微鏡下頸椎前方椎間孔拡大術(MacF)という手術です。

何しろ局所へのアプローチが低侵襲というメリットが大きいです。椎間孔を少し削るだけなので強度的に問題なく術後の頸椎カラーすら要らない。
PCを使う仕事の方なのでヘッドレストの付いた椅子に後頭部を付けて仕事をするように意識すればこの先も同じ症状が出る可能性は低いのではないですかねという話をしました。

低侵襲のオペが驚異的に進化していることはある程度知っていましたが、昔は考えもしなかった低侵襲で成果を出している領域があるんだと感心することしきりでした。何しろバイアスのかかった情報ばかりでしたから。

一方で、以前船橋の整形外科で脊柱管狭窄症の低侵襲椎体固定術で大腸を傷つけ患者が敗血症で亡くなっていたことがその4か月後にニュースになっていました。
この病院では同じ医師が同じ日に同じミスをもう一人にもしていたとのこと。

わき腹から内視鏡で腰椎にアプローチする「XLIF」という手術を導入してから三カ月(過去12例)しかたってないということでしたが
低侵襲の流れで安全かといえばそれは違っていて、術野が極端に限られるし遠近感が掴みにくいので慣れていないとこういうことが起こるのかもしれません。

後腹膜腔経由で患部(椎体)に到達するので股関節屈曲の為の大腰筋の損傷(2~3週間くらいで軽快)、陰部大腿神経の損傷(半年くらいで軽快)の可能性は指摘されていましたが、患者さんもなくなるとはまさか思ってもいなかったでしょう。

しかし、内視鏡による手術は圧倒的に低侵襲ですから術後回復も早く、これからも脊椎外科領域に限らずこの流れが進んでいくと思います。

こういう医療過誤のニュースを目にするたび心が痛みますが合併症が無くなるよう祈るしかありません。
患者側の心得としては術式毎(これ大事です)の執刀医の手術件数をしっかり確認することくらいでしょうか。

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