治療予約と予後の見立て

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僕が鍼灸師になるすっと以前、患者の立場だった時に違和感が強かったのが、その治療院がこちらの意向を聞かずに必ず次の予約を取ろうとしていたことです。

22、3歳の頃にある(鍼灸治療ではない)治療院に通っていたのですが、少ない新入社員の給料の中から5千円を払って「これだけ?」という治療でした。

効果を求めて通っているのですからカラダの癒しを求めるマッサージのように時間が長ければいいと言う訳ではないのですが。

しかし自分の身体に不安がある時は、効果もわからず何かに頼ろうとするので律義に通っていました。

今思えば知識や経験の無さが不安になっていたのだと分かります。向こうは商売なので続けてくると治りますよと言ってリピートさせますが、何回か通っているうちに「これは5千円の価値はないな」と感じて通うのをやめました。

根底にその若い頃の経験があるので、愁訴があって来院する患者さんには回復改善の可能性とおおよその治療期間、回数の目処を言うようにしています。

もちろん見立てよりもすぐ良くなって卒業してしまう人もいれば、良くなっても続けていればいい感じだからと継続する人も多くいます。

全然良くならなくて治療の予測を変えたり別の治療法を提示したりすることもあります。

その前に患者さん自身がこちらの説明が不十分だったのかそれとも思っていた経過と違ったのか、昔の僕のように治療に見切りをつけてしまうこともあります。

大事なことは信頼できる治療家を探し選ぶことです。自分のやっていることに自信があればこちらの質問に真摯にすべての知識で答えてくれるでしょう。

技術、知識に裏打ちされているのであればとりあえず続けて通ってみてくださいといったような呑気な提案はあり得ません。

ただその分、それぞれの患者さん毎に予後の提案は必ずしも本人にとっては耳触りのよいものになるとは限りません。しかしそれはこちらも親身になって真剣に患者さんのことを考えているからに他なりません。

そんな治療成績ですから新聞やテレビのサプリメントのCMのように、ビタミン剤を飲むだけで膝や腰の痛みが、甲殻類エキスを飲むだけで軟骨が、というのに飛びつく多くの人のメンタリティに一言云いたいのは山々なのですが、正面から云える立場でもないのです。

参照:「腰痛探検記」 高野秀行 集英社文庫

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