ɤ-GTPが4桁って

医療トピックス

「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」(高橋三千綱著 幻冬舎 2016年)を読みました。

これは小説の形をとっていますが、すべて本当のことだろうなと判ります。
その辛辣な書き方が医療従事者の末端の僕にはリアルに感じられたのです。
治療中に患者さんが病院での不満を話しているのを聞いている感じといいますか。

医師もたくさん登場しますが、糖質制限の江部康二先生と「がんばらない」の鎌田實先生以外は仮名です。
でも話の内容からどこの病院だとか、「あの先生だ」とか分かるような微妙な仮名です。

たまにどうしてこんな生活をするんだろうという患者さんを治療することがあります。
しかし、その人それぞれの人生観や価値観があってそうなっているわけでこちらがどうこう言う筋合いでもありません。

「健康なら死んでもいい」的な患者さんも多い中でそれはそれで本人の哲学が新鮮に感じられるのもまた事実です。

以前、「γーGTPが4桁だよ」と言う患者さんがいました。
来院当初は腰が痛く、ふくらはぎがつれたりで立ち仕事が辛いという主訴でした。

それ以降も酒臭いときがあったり仕事の精神的なストレスの話も聞いていました。
その時は手首にICタグをつけたままで入院中だといって来院しました。

僕はそのとき初めてガンマが4桁あってもこうしていられるんだと妙に納得して治療をしたことを覚えています。

東洋医学では「肝は筋を司る」という言葉があり筋肉は肝臓と相関関係にあります。
こういう場合は現代医学的にも血液検査ではγーGTPとともにCK(筋肉の壊れ具合)の値も高くなっています。

その患者さんは、その後転職し精神的ストレスや長時間労働から解放され、忘れた頃に予約の電話がかかってくる普通の常連さんになりました。

今の仕事は、疲れてお酒を飲む間もなく寝てしまうとのことです。

この“私小説”では管理栄養士が語る、糖尿病に対する糖質制限食の医学界での立ち位置や現状も判ります。
中村天風のインスリンは身体をダメにするという説も今となっては説得力がありますし。

執筆当時、リーバクト(肝硬変患者へのアミノ酸製剤)、モニラックシロップ(高アンモニア血症を抑えて肝性脳症を防ぐ薬)を処方されている人が書いた本なのに、この前向きでさわやかな読後感って一体・・・・。

著者のその後の著作についても後日書きます・・・・元気ですから。

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