ゆっくり眠れる日は来る

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90歳代女性。家にばかりいるからすぐ眠くなるのだと。しみじみと「いくら寝ても誰にも何も言われないこんな日が来るとは思わなかった」としみじみと話します。

昭和20年代後半に幼い3人の子供を残し御主人が盲腸をこじらせあっという間に亡くなり、家業を手伝う御主人の弟と、姑と大姑とともに残されてしまいました。継いだ弟が眠れないから「子供を泣かすな」と姑に言われ夜泣きに外に出て泣き止むまで歩いたと。

朝もおくるみで子供を背負い早起きしてご飯炊きで、そんな時「布団に手を入れて眠れる日なんて来るのかしらって思ったこともあったんだけどねぇ」という話を治療しながら感慨深く聞いていました。今は、嫌というほど時間があっていくらでも眠れます。

80歳代男性。デパス(一般名エチゾラム)を総合病院の担当医師が代わってから出してくれないと。代替の薬はあまり効かず、だから眠れないのだと訴えます。何故そんなに眠りにこだわるのかを尋ねると眠れないといろいろなことを考えるし、夢見が悪いのだということでした。

昭和20年3月10日、江東区堅川に住んでいたこの患者さんは、お姉さん代わりに手を引いて小学校に連れて行ってくれた近所の面倒見の良かった幼馴染みの“あさり屋のまさこちゃん”が目の前でお母さんを追って火の中に飛び込んで行ったのを忘れられないのだと言いました。当時13歳だった少年には長く残る心の傷となっているのです。

結局、離脱症状に悩まされながらももう少し副作用の弱い薬に換わってめまいの様な不快感は軽減されています。というか現状を受け入れながらそれなりに睡眠はとれているようです。

基本的に睡眠は本人次第なので本人が駄目だと言えば睡眠障害と医師は判断し安定剤や抗不安薬、睡眠導入剤を処方され晩酌のように日常化していきます。なかなかやめられないのです。もちろん副作用のない薬など存在しませんから眼瞼けいれん、ふらつきから消化器症状などいろいろ訴えます。【眼瞼けいれんは何故起こる】(2023年10月15日UP)

あれこれ考えてしまって精神的にも負担になるなら薬を使っても眠った方がいいでしょうというのが西洋医学の一般的な考え方です。

それに対して、きっちりと、もしくは規則的に眠れなくても精神的に負担にならないように考えられる方向にもっていく、または気にならない状態に体調を整えるのが東洋医学の考えの基本にあることなのではないかと思っています。

参照:「依存症は気になるけど…デパスの首位変わらず」~医師が最もよく処方する抗不安薬 56%がエチゾラム(2020.5.17日経メディカル)

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