タリージェのやめ時 変形性側弯症編

70代女性の患者さんが、腰部の疼痛と坐骨神経痛でタリージェ、トラムセットに加えセレコックスを処方されて約1年半が経過し、半年ぶりに来院したところ腰部の側弯が著明に出現していて驚きました。本人は痛みが強いので側弯に気づいていなかったのですが左への前傾姿勢で腸骨(骨盤の骨)と肋骨下端がぶつかって痛いとも訴えました。

以前から痩せていたのですが1年前の胃がんの内視鏡手術後さらに痩せたことに加えて、もともと骨自体が細かったのも一因と考えられます。

半年前の来院時にもこのままだと症状が進みやすいので、漫然と痛み止めを服用するのではなく日々痛みを出さないような生活の工夫、腰痛ベルト(サポーター)の使用、ストレッチなどを指導したのですがやはり服用するだけで痛みが止まるのできっちり出された薬を服用する→動く→痛くなるので薬を服用する→動く…このサイクルの終着点のひとつが変形性側弯症といえます。

読売新聞の医療ルネサンス(No6513腰痛に負けない~4 変形性側わん症で手術)でも同様の症例が報告されています。50歳で腰に圧迫感、近医で「背骨がずれている」と10年間痛み止め、その後に別の整形ではMRIで背骨が「く」の字に曲がっていると言われ2年間リハビリ、その後300mの歩行が辛く慶応大学病院の松本守雄教授に手術を提案され2年悩んだが71歳で手術したと。

側弯症は脊椎が10度以上曲がった状態を指し、40度を超えると手術が必要になり、この患者さんは73度と大きく曲がっていたほか腰の痛みが強いことから手術を提案されたとのこと。術後1年数か月経過の現在は2km離れたデパートまで歩けると記事にはありました。

これはあくまでその時点でハッピーエンドですが、骨の状態が悪かったり80代など高齢になるとリハビリも含めて成績が落ちますので余程でなければ手術を勧めません。当院の腰痛系の患者さんあるあるに、『整形外科で「もっと早く来てくれれば・・・。」って言われた』というのがあります。

上記の患者さんも放置していたわけではありません、総合病院整形外科4軒目ですから。鍼灸院はショッピングしませんが僕の忠告ではダメなのです。大きい病院に行けば治してくれるだろうとドクターショッピングする本人の考え方もありますが、時間を戻せないのにこのセリフは・・・。

早く来たにしてもタリージェ、トラムセット、トラマール、サインバルタや座薬とかでしょう。加齢による症状の悪化はしようがないにしても長期にわたる強い鎮痛剤の投与はこういう不幸を招きます。

現代医学のこういった領域では軽症の湿布、痛み止めと重症の外科手術の間がほとんど抜け落ちています。とりわけ患者さんそれぞれの問題点と最善の対策を見つけてリハビリメニューを提案、指導してくれる医師、理学療法士(PT)の存在が必須なのですが。

この患者さんも海千山千で慣れていましたが。その後も懲りずに近所の整形(順番が逆!)に行って既往症を話しては「膝は診るけど腰は診ません」と60代勤務医に嫌がられ、結局やっと薬では治せないと気づいたのか、痛み止め服用の悪化のサイクルから離脱したいと思ったのかまずタリージェを止め、トラムセットを朝のみ(夜は眠れなかった時だけ服用)にしていたら結局痛み止めのポリファーマシー(多剤併用処方)の悪影響から脱出することが出来ました。

彼女も薬を減らしても家事で無理さえしなければ痛みや前傾がきつくならないことを自覚し始めたので、細めで柔らかいコルセットを家事や外出時に使用し、押し車を使うようにして痛みを出さないように過ごし、週2回程度の鍼灸治療と日々の自宅でのストレッチで何とか折り合いがついています。

さらなる目標は、朝1回のトラムセットからたっぷり貯まっているらしいセレコックス100mg×2回へのスケールダウンでなんとか日常を過ごせないものか思っていますが、なかなか難しいという状態です。

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