スマホと不安との相関

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僕が鍼灸師の免許を取ったばかりの30年程前、携帯電話が普及し出した頃、師匠がベッドの下の脱衣カゴの中で時々鳴る携帯電話に「一番リラックスする時に…こんな生活だからカラダの調子が狂うんだ」とこぼしていました。

師匠にとっては患者さんの身体と向き合う神聖な時間だったのだと思います。その時はお気楽な書生だったこともあって、まあしょうがないよな位の感覚でしたが。

そして30年経過した現在、やはり理解できないのが治療が終わって患者さんが起き上がってハアと一息ついて、術後の感想を言おうか(そう思いつつ身支度を整えているであろうと背を向けてカルテ記入をしています)と思いきや、まずスマホを見ている人が少なからずいるのです。

一対一の治療室で治療が終わって「お疲れ様でした。今日の状態は…」というタイミングを失い、患者さんのスマホチェック待ちの宙ぶらりんの僕がいる訳です。

10秒でしょうか。本人はもっと短く感じているかもしれません。待合室じゃダメなの?と。当然イラッとなどしませんがそんな感じなのか・・・と思ってしまうのです。

スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツが子供にスマホを持たせなかったという話は有名ですがスマホの依存性について書かれたこれらの本はまさにそういうことかと。

脳内には新しい情報、期待から報酬への刺激を探索する欲求が元々あってそれを次から次へと巧妙に刺激され手放せなくなっていくのです。

スマホには人間の報酬系を活性化させて注目を引くというとてつもない力、つまり依存性があるのだと。

衝動にブレーキをかける脳内の領域は「スマホを手に取りたい」という欲求も我慢させてくれる。が、この領域が未発達な子供や若者そして自己抑制のできない大人達をもデジタルテクノロジーをさらに魅惑的なものにしてしまいます。

学校でも電車でもベッドでも歩きながらでも、何なら自転車に乗りながらでも見ずにはいられない。未成年者にアルコールは禁止するのに未成年者の方が依存症になるリスクが高いスマホにどう対処すればいいのでしょうか。

不安とスマホの使用過多の調査でも9割の調査で相関性があるということがわかっているそうです。ストレスと不安は基本的に体内の同じシステムの作動によって起こります。

スマホから距離を置かせる実験でも最も不安が大きかったのは、やはりスマホを一番よく使っている人たちなのです。

20代の若者四千人の調査でも熱心にスマホを使う人ほどストレスの問題を抱えている率が高くうつ症状のあるケースが多かった、アメリカの精神医学会の約三千五百人の調査でもスマホを頻繁に取り出して見る人ほどストレスを多く抱えていた、多くの被検者が時々スマホを遠ざけておく方がいいと判っている、でも実行しているのは3割に満たないということです。

これだけ生活が豊かになってニュースも、友人知人の情報もすぐ手に入り、しかし便利になればなるほどメンタルの健康が損なわれてしまう、学力(集中力)が下がっていく。なんという皮肉。

「スマホは私たちの最新のドラッグである」という表現がしっくりきます。いつもスマホが気になって集中できないのです。特に不安定な子供、若者、その延長線上の大人はSNSの影響を受けやすいのです。

スウェーデンでは大人の9人に1人が抗うつ薬を処方されているとのことです。不眠で受信する患者が20年で8倍とのこと。今までにない数の若者が睡眠導入剤を求め著者(精神科医)のもとにやって来るということです。

スマホがうつになるというよりもうつの人がスマホをよく使うということだと推察しています。過剰なスマホ依存は睡眠不足、座りっぱなし、引きこもりがち、社会的孤立へとつながります。

アルコール依存も薬物乱用もそうですがやはり依存症はうつになるリスクは高いのです。

スマホが及ぼす最大の影響は「時間を奪うこと」と述べ警鐘を鳴らしています。仕事、勉強はもとより睡眠、運動、直接の人付き合いに充てられるはずの貴重な時間がすべてスマホのスクリーンに奪われるということです。

人生がもう「あがり」の暇な高齢者がテレビのワイドショーに時間を奪われるのとは訳が違います。

冒頭の患者さんもやはりメンタルが繊細な人たちです。家族、友人に気を使う人です。もうガラケーに戻ることはあり得ないので、対策としては脳内の抑制系の弱めの人や未発達な子供や若者は睡眠、運動、(直接的な)他者とのかかわりが重要ということです。

結論として、その為にもスマホと距離を置けということです。生活、人生においてスマホを操作しているようでいて実はスマホに縛られ、SNSに操られていることを自覚していただきたいと思います。

参照:「スマホ脳」 アンデシュ・ハンセン 新潮新書
   「僕らはそれに抵抗できない」 アダム・オルター ダイヤモンド社

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