人工甘味料の危険性

仕事が忙しくなって精神的に疲れると「呼吸の仕方がわからない」と訴えたり、自動車を運転していて「橋を渡るときが恐くなる」など時々パニック障害的な不安神経症状を訴えて来院する40代女性。

治療中に缶チューハイの選択肢が少ないという話になりました。働く主婦はなかなか自分の時間が取れないことが多く、患者さんの中には「キッチンで夕飯を作りながら一缶飲むのが楽しみ」という人(僕は“タモリ方式”と呼んでいます)が何人かいます。

その女性もタモリ方式の人で、人工甘味料(アセスルファム、アステルパーム、スクラロース)入りは独特の風味が美味しくないので必ず除外して買うという事でした。僕も全く同感で、入っているだけで不味いのです。

お酒の風味とは関係ないのですが、腸内細菌について調べていると、以前からよく人工甘味料の影響について言及されています。

妊娠中に人工甘味料入りのソフトドリンク(1日4缶以上)で37週未満の早産リスクが高まっていた、加糖ドリンク摂取によるリスク上昇はなし 〈デンマーク政府の研究機関、2010〉

人工甘味料入り炭酸飲料1日2缶以上摂取の女性、11年間で推算糸球体濾過量(eGFR)が30%以上低下するリスクが倍増、加糖炭酸飲料では有意なリスク上昇なし 〈ハーバード大、2010〉

人工甘味料は腸内細菌に影響を与え、摂取しているヒトは耐糖能が悪い(メタボリックシンドローム関連項目に正の相関) 〈ネイチャー、2014〉

このように人工甘味料は最近、カロリーや糖質類の摂取を抑えるためによく使われているのですが、小腸で消化吸収されず大腸に届くためエネルギーにはなりませんが、それよりも腸内細菌叢の構成を乱し耐糖能異常を起こす(イスラエルのグループ)、潰瘍性大腸炎のリスクが高くなるなど様々な「副作用」が示されています。

また、人工甘味料入りのダイエットソーダを飲む人は3倍脳卒中、認知症になり易いとボストン大などの研究チームが発表しています。 〈朝日新聞デジタル2017年4月23日〉

それによると、砂糖入り飲料(普通の炭酸飲料)を飲んでいる人は目立った影響は見られなかったということで、研究チームは人工甘味料が発症リスクを高めているのか、そういう体質や生活習慣の人がダイエット飲料を好んで飲んでいるのか現時点ではわからないとしていますが。

個人的には前者4割(人工甘味料の弊害は前述したとおり以前からいろいろ指摘されています)、後者6割(あの風味を美味しいと感じる味覚、糖質ゼロなら太らないからとやっぱり甘味に手を伸ばす安易さ)という感覚でいます。

このようにネガティブ要素は多々ありますが北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生は、しかしあくまでも糖尿病患者にとっては血糖値を上げないこれらの人工甘味料は一定の価値はあるし、エビデンスを比べても闇雲に恐れる必要はないと述べています。 〈メディカルトリビューン2021.3.19〉

結論としては少なくとも糖尿病患者に関しては血糖値上昇を抑制する働きはあるので代替するのは有効と考えます。糖質制限やダイエットの目的で基本である運動や食行動を改善することはスルーして安易に人工甘味料に置き換えて日常的に摂取することはどうなのかとは思いますがそれは個人の問題ですし。

似たような話題でエナジードリンクに関しても、米陸軍当局でエナジードリンクの過度の飲用を避けるべきだと警鐘を鳴らしています。) 〈プレジデント・オンライン 2017.4.22〉

ここぞという時にはいいのかもしれませんが、常用が危険な理由としてタウリンの効果(神経内分泌作用)、糖分量、カフェイン量について挙げています。ここでの最大の問題は睡眠障害であるとのことです。

で、米陸軍の結論としては「水でも飲んでろ」だそうです。解りやすい。要はそういう事なのです。

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