「こだま」さんに惹かれる

日常生活

「こだま」という作家がいます。元々、同人誌やブログで書いていた人なのでそのままそういう匿名性を持ったペンネームなのでしょう。

ブロガーから本も出して顔出ししていないという意味では「ちきりん」も同じですが、ちきりんはそこそこ専門性の高い分野のキャリアがあり、たぶん本名でも発言があるので半ばバレてもいるのですが。

こちらの場合は身内にも一切内緒でやっているということで、その根底にあるハラハラ感と裏腹のしっとりした読後感というか、僕としては読者の心の隙間を刺激するそこはかとない優しさとユーモアに惹きつけられるのです。

インディーズ系だけに『夫のちんぽが入らない』というこれもどうなんだというタイトルで世に出てきたのですが、それが話題になった時も際物的な印象で当然スルーしていました。

仕事がら自律神経失調を訴える患者さんや不眠の患者さん、大なり小なりメンタルに不調を感じる患者さんを相手にすることも多いのでその類の本を読むことも多いのです。

その流れで“14歳の世渡りシリーズ”の中の『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』(河出書房新社)という25人のオムニバス形式の本を読みました。その中に彼女の文章も収載されていたのがきっかけです。

デビューが「夫の・・・」なので、また本人のメンタル資質も家庭環境(母子関係)もある意味ワイルドなので当初は少し引き気味で読むのですが、そこはこういう愁訴を抱える人にありがちな純粋すぎると言えばいいのか真面目すぎると言えばいいのか、臨床でも力になりたいと感じてしまう繊細な人なのです。

決して上から目線ではなくて道でしゃがんでいる小学生やお婆ちゃんがいたら声をかけずにはいられないあの感じと言えばわかってもらえるかもしれません。何なら荒川土手でワンカップを持ってヘタっているおじいちゃんでも声を掛けたい方なのです。

しかも、「夫の・・・」というタイトルからは想像もできなかったのですが内気な元小学校の教員で御主人も同業者で同様に、いやある意味彼女以上に繊細な人でした。

そうなのです、人は皆、このようにして気持ちや身体やお金を何とかやりくりしてどんよりの空をやり過ごして小さな幸せを捜し、小さな楽しみを温め生きているのです。

そして僕は鍼灸という手段でそういった人の力になりたいと思うのです。僕もトータル19年間北海道のどんよりの冬の空を眺めながら「この世の終わりみたいだ」と思っていたクチなので彼女の書く世界も理解できますし、その「地の果て」で今後も生きていこうという気持ちもまた理解できるのです。

願わくはもう書けば書くほど身バレしてしまうであろう素敵なエッセイはいいから、ハラハラしない身バレと締め切りのストレスのない状態で、御主人と猫とで心安く、平穏で心身とも安定して暮らしていただきたいと思わずにはいられないのです。

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