コロナの流行で患者さん戻る

医療トピック

「風が吹けば桶屋が儲かる」という故事がありますが、新型コロナウィルスの流行で患者さんが戻ってきたという話です。

80歳代女性。一昨年に両側の変形性膝関節症で通院していましたが、膝がまっすぐに伸ばせない屈曲拘縮も進行していてなかなか改善せず、来なくなってしまった患者さんでした。ある日、シルバーカーで予約なしに来院しました。耳が遠いので電話予約ができないためです。

話を聞くと、去年から友人に誘われて整形外科クリニックでリハビリと膝関節の注射に通っていたそうです。ところが途中から骨のためという別な注射が加わったそうなのです。

ところが、これがやった後に気持ちが悪くなり看護師に訴えても「戻しそう?」と聞くだけで何もしてくれず、やっとのことで家に帰るのだとのこと。その日は昼ご飯も食べられないで夕方まで横になっているらしいのです。

しかもその注射をした時だけ請求が高いので「これじゃ鍼の方がいいわ」ということで思い出して来たのだというのです。

調べてみるとテリボン®(テリパラチド)という薬で添付文書の「重要な基本的注意」で
『本剤投与直後から数時間後にかけてショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失、痙攣、転倒があらわれることがある。(中略)以下の点に注意すること。』

『・投与後30分程度はできる限り患者の状態を観察すること。特に、外来患者に投与した場合には安全を確認して帰宅させることが望ましい』

『・投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗等が生じた場合には、症状がおさまるまで座るか横になるように患者に指導すること。』とあります。

しかし、このクリニックの対応はお昼近くだからなのか、看護師個人の問題なのか、クリニックの大人の事情を理解しすぎているからなのか。

膝のヒアルロン酸注射(アルツディスポ関節注)の方は1770円(負担177円)ですが頼んでもいない具合の悪くなる骨粗しょう症の注射は11200円(負担1120円)。出費はともかく(本人にとっては)謎の注射でやっとのことで帰宅するくらいなら、と鍼灸治療を思い出しても仕方ありません。

新型コロナウィルスが流行すると高齢者は病院に行くのを可能な限り控えるようになる(ましてリハビリ整形は尚更かもしれません)、すると患者さんが減って固定費率の高いクリニックや病院の経営状態が悪化する。

すると既存の患者さんの単価を上げるよう試みる、するとそちらに気を取られ、顧客である患者さんへの対応、心遣いがおろそかになる。結果として患者さんの信頼を失い、心が離れ、すっかり忘れていた鍼灸治療を思い出す、という流れでした。

明日は我が身と気を引き締めた次第です。

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