男はやっぱりつらいよ

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詩人、作家であり2020年度まで早稲田大学で授業を持っていた伊藤比呂美の随筆の中に、学生とのリアクションペーパーのやり取りの話がありました。

学籍番号、名前と授業の感想を記入する出席票代わりのリアクションペーパー(リアぺ)。

『人生相談なら二十数年やってきたから悩みがあったらリアぺに書いてくれと言ったらあっという間に人生相談の場になった』ということです。270人の大教室で。授業のタイトルは「文学とジェンダー」だそうですが彼氏彼女が欲しい、LGBT、自信がない等々様々で。

『あるとき、おもしろい話題が出てきた。ある女子がこんなことを書いた。
「私はある先輩のことをいいなと思っていた。だからずっとアプローチしていたのに、先輩がとうとう告白してくれたとたん、すごくいやになってしまって、気持ち悪いとさえ思うようになってしまった。どうしてかわかりません」』

『読み上げたら「私もそうだ「まったくそのとおりだ」と反応してくる子がたくさんいた。「私も同じ行動をくり返している。一生異性とつきあえないかもしれない」と悩んでいる子もいた。ほとんど女子だった。』

『男子からは「僕もそういう目に遭った」「私も被害者です」という声がいくつも来た。そしてそれに対して「これは蛙化現象と呼ばれている」「蛙化現象と言います」という声も来た。男子からの「いったい僕たちはどうしたらいいのか、女子に聞いてほしい」という願いを受けて、意見のある人は書いてと頼んだら、こんな考察が帰ってきた。』

『(略)「男の側の問題ではないんじゃないか」「私たちの問題です「どんなに完璧な男でも蛙化の被害に遭う」という表現が多かったのは印象的だった。』

グリム童話の「蛙の王さま」に依った命名だそうですが、この文章を読んだ時も先日書いた、子供が産まれた途端に奥さんの全ての意識と愛情のベクトルがそっちに向いてしまってとまどう男性患者さんを思い出しました。【男は大昔からつらいのです】(2023年12月31日UP)

それはないでしょとは思いますが、よく考えるとこの蛙化と呼ばれる現象もメスがより良い遺伝子を選んで子孫を残すためのいろいろある取捨選択の中の一つの形態なのかもしれないと考えると妙に納得できてしまうのです。

同時に、そこでオスも生きていく厳しさをいろいろ学んでオスとして成長しているのもまた事実だと思うのです。

やっぱり男はつらいよ、ですね・・・。

参照:『道行きや』 伊藤比呂美 新潮社

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