お灸の求道者 ダルビッシュ投手

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治療中は静かに音楽を、患者さんがいない時は好きな音楽や動画をというように仕事場でのほとんどの時間をYouTubeとともに過ごしています。

以前、チャンネル登録をしているサンディエゴ・パドレス所属のダルビッシュ有投手の「これがないと先発できないってレベルの商品・・・」というタイトルの動画を見ていたら、その答えはなんと温灸(せんねん灸‟太陽“)ということでした。(当時はシカゴ・カブス所属)

その年の初めにソフトバンクの千賀、石川両投手とのダルビッシュ投手のダラスの自宅でのキャッチボールの動画も上がっており、その時も二人のルーティンケアの質問に「お灸」と言っていました。

彼に刺激を受けて23年にメジャーに挑戦した千賀投手の去年のニューヨーク・メッツでの活躍はご存じの通りです。

ダルビッシュ投手は2019年の6,7月頃から調子が良くなったそうなのですが、その頃から先発登板前に自分でお灸を必ず使うということです。

使い過ぎて一時手に入らず焦ったと。一回に20個くらい使うそうで、コストとしては1400円くらいです。

右肘の内側側副靱帯の再建(トミー・ジョン)手術をしているので、その辺りから胸鎖乳突筋の付着部辺り、肩周りに自分がマッチするツボ(経穴)をネット検索し、選んでやっているそうです。

一般の人の効果の感覚と違い、少しの違いでパフォーマンスというか結果がわかりやすく、大きく違ってくるために微妙な感覚にこだわる様子は一般人にはほとんど理解できません。

しかし「違いがはっきり分かる」という点においてはやはりとても敏感に身体の反応を受け取るように細心の注意を払っているのです。

同じようなツボへの温熱刺激でも直接のお灸はあまり良くなかったそうです。ここは個人的には少し残念でしたが、痛み、痺れなどの強い症状があるわけではないので、登板前の肩から肘への軟部組織へのパフォーマンス向上のための刺激としては温灸がベストなのかもしれません。

ヒートパック(≒ホットパック)もイマイチで登板前日からお風呂は逆に全くダメなのだそうです。どれも同じ“温める方法”ですが違うそうなのです。また、クラブハウスは個室じゃないので煙と匂いが出る普通の温灸は使えないとのことです。

このせんねん灸“太陽”は、発熱システムとしてはお灸のホッカイロと言えば解り易いかもしれません。火を使わずに火傷も気にせずに手軽に使えるので僕も10年程前に煙や匂いを気にする家族がいる患者さん、もしくは火の取り扱いの恐い一人暮らしの女性の患者さん用に業務用を大箱買いして分けてあげていたことがあります。

自助論ではありませんが日々自分でもやろうとする人は当然、治療も可能な限り自分で管理するという意識が高いのです。

修業時代、師匠は患者さんに500円分のもぐさを買わせて灸点を下してそれであとは自分でやってください、というやり方でした。

そのため僕も開業の時は小分けしたもぐさを大量に用意しましたが、家族で、夫婦間でお灸をしますという人は本当にいなくなってしまいました。治す努力をしないというよりもそこまでしなくても手軽な治療の選択肢が多様になったことが大きいと思います。

ダルビッシュ投手の例は非常に特殊なのかもしれません。普通に暮らしている人にはなかなか解りにくいかもしれませんが紙一重の感覚の差のパフォーマンスで勝負している彼にとっては微妙な筋肉、ほんの少しの投球の違いがはっきり自分で判るのでしょう。

だからなおさら真剣に身体にいいものを追求し、自ら効果を確認するのでしょう。トレーナーやマッサーに全て任せず、ストレッチからサプリメントまでいろいろ確かめて効果をYouTubeで報告する姿は野球選手というより求道者という感じがします。

超一流の人というのは当たり前のことかもしれませんが流石に意識が違います。自分の追い求めるものの為にあらゆる面で真摯に向き合い、可能性を試してみる精神、努力に驚くとともに心底敬服する次第です。

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