何を食べても美味しくない

日常生活

歳をとると食の好みが変わってくるというのはよくあることです。歳をとるとともに食欲が落ちるのも体重が落ちていくのも自然の事なのです。

筋力も30歳代前半辺りをピークに毎年1%程度低下していくので急激な痩せ、病的な減量でなければ特に問題はないというより自然なことなのですが当人はとても嫌がります。

しかし筋力が低下していき活動量も少しずつ低下していくので、身体も少しずつ軽くなってしかるべきです。また、加齢に伴って筋力のみならず食欲も、個人差はありますが感覚(味覚)も落ちていくようです。

若い頃食べたアワビの握りがとても美味しくてもう一度食べたいとずっと思っていてやっと息子が食べさせてくれたけど全く美味しくなかった(80歳代女性)。

やはり若い時に食べたうなぎが美味しくて歳を経て落ち着いてから同じ店でうなぎを食べる機会があったのだけどそうでもなかったのよ(70歳代女性)とか、やはり食欲を含めその「欲」というものが「生命力」なのかもしれません。

食欲も「昔は何を食べても美味しかったけれども今は何を食べても美味しくない」という患者さんが少なからずいますが、歳をとるとそういう時が必ず訪れるのだという訳でもありません。

亜鉛不足による味覚障害はよく知られているところですが、それに加えてうつ症状に伴う味覚障害や処方される薬の副作用としての味覚障害(厚労省HPによると200種)、その他糖尿病に伴う症状(神経障害、口の乾き)など様々な原因が考えられます。

また、母親の介護で疲れ切った息子さん(50歳代)の、検査をしても異常がない心因性の味覚障害も経験したことがあります。

「何を食べても…」と訴える患者さんの傾向として昔から規則正しく三度の食事をとってきたので、それを習慣にして頑なに時間をきっちり守っているというのがあります。しかし活動量も代謝量も下がってきて胃の消化力も低下し、まして体調の悪い時など食欲のない時もやはり頭で「食べないと体力がつかないから」と考えてしまいます。

身体の調子が悪いから食欲も無いんですよと本人に伝えているのですがなかなか納得してもらえず、食べなければと無理に食べる→消化も悪いし美味しくない→余計に消化器系の不調→胃薬を飲んでまた食べる…という悪循環の患者さんをよく経験します。

ここはひとつ、一食抜いてみるとか、ごく少量の果物か何かにしてお腹のすくのを待つということを選択していただきたいのです。お腹がすくとあれが食べたい、これが食べたいと思いつくようになります。それが食欲=生命力なのです。

以前、資源ごみの朝にごっそりと栄養ドリンクの瓶を出す近所のおばあちゃんがいましたがいくらタウリン1000㎎を注入しても若い人の肉体疲労時の栄養補給じゃないので身体が吸収せずそのまま黄色い尿が出て終わりなのではないでしょうか。普段の食事がおろそかになる分、逆に身体の負担になるやもと考えます。

食事ができない非常時なら仕方がありませんがお腹が空かないからと日常的にグビグビいくのは如何なものでしょうか。少量しか食べられないとしてもそれが自然でそういう身体の状態なのです。

栄養は食事から、旬なものから摂るというという原則を忘れないでいただきたいと思います。

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