寝る時になると足がむずむずするという保育園児。母親が足をさすってやったりしているとの事。
「それは寝る時だけなの?」と尋ねると「ううん、セブンイレブンみたいな感じ」と答えます。そのココロは「いつでも」という事らしく、とんちの効く男の子でした。
母親は寝付く時にあまりにビクンビクンと動くので、てんかんじゃないかと心配していましたがそれほど動きがすごいらしいのです。そのような状態と足の事で彼もなかなか入眠できないということです。
しかしその後お母さんに確認してもらったところ、このビクンは寝付くまでに限定しているとの事らしく“入眠時ミオクローヌス”と思われました。ウトウトした時に誰でもビクンとなるアレです。
しかしむずむず脚症候群(以下RLS=restless legs syndrome)は多少なりとも幼少期から感じていたという患者さんも少なくありません。
僕の立場での治療としては、寝る前だけ気になる足の為にどうこうというのではなく、几帳面で気の強い性格の男の子だったので、いわゆる気を散らすような小児はりの治療をしました。
また“お昼寝”があることで、眠気があまり強くない可能性もあるので入学後は改善されるのではという話をしました。
もう一例は日中眠くてしょうがない時があり、スーパーでレジを待っていても立ったまま一瞬眠ってしまう事があるとの事。仕事と子育てにとても忙しくまた全てに一生懸命で主訴は頚肩部痛や腰背痛で時々来院していた40歳代女性。
僕はただの過労かSAS(睡眠時無呼吸症候群)かと思いましたが自転車に乗っていて寝そうになって流石にまずいと総合病院へ。一晩入院して睡眠ポリグラフを調べたところRLSと診断されたとの事でした。
ドパミンアゴニストのプラミペキソール(ビシフロール®)が処方されましたが、それで仕事中も全く眠くなくなったということですからやはりRLSであったようです。
RLSは自覚症状があることが殆どですが、この例の様に自分でも気づいていない場合もまれにあります。
この患者さんは何度も治療していましたが、医療関係者のためか話が尽きず治療中に眠る患者さんも多いなかでも眠ることなど無かったためにRLSとは全く気が付きませんでした。
RLSの75%は同時に不眠症があり、QOLを低下させるためにやはり不眠症になることが最大の問題になります。
軽症の患者では足をバタバタさせていると10分以内にむずむずは収まって(つまり睡魔>むずむずで)寝入ることができるのですが、重症の患者ではそれがどんどん明け方にずれ込み日中の生活や仕事への悪影響が出るというのが典型的なパタンです。
鉄不足でドパミン不足となることから鉄欠乏性貧血でも起こり易く、ドパミン不足ということでパーキンソン病の患者も同様の症状が出現します。
いずれにせよ足指、膝、股関節、手指などの神経の過剰興奮(周期性四肢運動障害)がRLSの大きなサインといえると思います。
参考:「むずむず脚のからくり」 久米 明人著 新興医学出版社
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