ストレスのほとんどは人間関係から

仕事

『「先進国の貧困層でも中世の王侯貴族よりも豪華な暮らしをしている」といわれるようになりました。けっして皮肉ではなく物理的に不愉快なことは世界からどんどんなくなっています。テクノロジーによって生活がどんどん快適になるにつれてすべての不愉快なものは人間関係からやってくるようになったのです』( 『働き方2.0 vs 4.0 不条理な会社人生から自由になれる』 橘 玲 PHP研究所)

あっという間に公衆電話から携帯電話が当たり前になり、ガラケーがスマホにとって代わり本当にいろいろなことができるようになりました。財布なしで買い物をしたり、動画を見たり、調べ物をしたり。しかしながらそれがはたして生活改善はともかく、肝心の健康度に反映されているのでしょうか。

40歳代男性、工場勤務の中間管理職。もともと仕事関係でも肉体的なストレスには強い方でしたが、社歴が長くなるにつれ創業者一族の上司への不満とその上司をやはり同じように感じる部下からの不満の板挟みで微妙に体調を崩してしまいました。

微妙にというのは、強い精神的ストレスですぐに現れるダメージは容易に原因の見当がつくのですが地味なストレスにじんわり晒されている場合は、なかなかその症状も強く出ないためになぜ出現するのか判らないことも多いのです。

当初は手足の皮膚炎のようなものから始まりました。仕事で特別な薬品などを扱うわけでもなくステロイドで対応できていましたが、今度はもともと早起きの仕事だったのですが早朝覚醒するようになり、しかも熟睡感がなく朝起きるのが辛くなったと訴えられて初めてこれは抑うつ症状ではないかと思いはじめました。

子供が生まれたことや、その他にも以前には食べられていた生ものにアタるなどの消化器症状も訴えるようになり精神的ストレスのコントロールが必須であると考えました。

ある程度の事業体であればストレスチェックなどメンタル系のケアもあるのですがこの患者さんのような中小企業だとストレスの自己管理、この場合でいえばひどくなる前に認知行動療法で対処するというのが基本だと考えました。

先に精神科を訪れると精神安定剤や抗うつ薬などが処方されたりしますが定期的に鍼灸治療をしているので、まずこちらで対処することになりました。

考え方を上手く転換すること、これが基本です。今はこう感じるけど、こういう風に考えてみたらどうだろう、こういう風に考えられないか。幸い彼は中間管理職なので経営者側の立場でも考えることができます。

そうすることによって上からも下からも挟まれているという立場から、上からも下からも距離を置いた立場へと、俯瞰した視線で物事を見られるようになりました。心理学的にはメタ認知ともいいます。

傍から言うのは簡単ですが自分の中でそういう考え方にスイッチする際にも体力が必要ですし、そういう考えを維持していくにもまた体力が必要です。

外に出てきた症状は精神的ストレスによるメンタルの不調ですが、皮膚や胃腸など、どこの部位、どこの臓器の不具合であっても憂本人にとっては苦痛です。無理な負荷は身体のどこかに必ず現れてきます。

それを可能な限り見逃さずチェックしようと試みること、できるところが東洋医学のいいところでもあります。

「未病を治す」という漢方の言葉がありますが、未だ病として現れていない病のうちに治してしまいましょうということです。ボヤのうちに消してしまえば水もコップ一杯で済みます。

小さなボヤのみならず、その前段階の煙が出そうなところを見つけて処置をするのがこの仕事の醍醐味であり、大きな売りでもあるのです。

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