痛みとともにさすらう

鍼灸治療

今は亡きサブカル系の隔週刊テレビ番組雑誌「TVブロス」の創刊号からの愛読者でしたが、リニューアル直前の巻頭の松尾スズキの連載コラムが医療雑誌か思想系のそれのようで面白い時期がありました。

タイトルも刺激的で、「地獄から救いを求めて」→「痛みと向き合い哲学者になる」→「痛くて俺は芸術家になった」と続きます。

事の起こりは首が『ここ一ヶ月ずーっと同じテンションで痛い』ようで、特に星状神経節ブロックの記述がリアルです。

『20回ぐらいやれば治る、かもしれない、という医者の言葉を信じて、今、5回目である。星状神経節というものがある喉に注射を打つのは非常に怖かったが、もう慣れた。それより、打ってから数時間は痛みがとれるので、もう、それが楽しみにすらなってきている』

『注射を打ってしばらくすると、痛みが去ったわけではないのに、それが気にならなくなってくるくらいの気持ちよさが首のあたりにジワーっと漂うのだ。(中略)今、自分の生きざまは非常にシンプルである。「いかにすれば痛さを忘れていられるか」それのみなのだ』

『とにかく、気が付いたらスマホで、鎮痛剤やペインクリニック、整形外科に整体の評判を調べまくって』で選んだペインクリニックの医者の前述したざっくりした勧めに惚れた弱みで期待をかけたようです。

上位検索される治療院でこちら側(業界側)からの評価が高いのは少数であると感じています。解り易い理由としてはウェブ集客にお金をかけているから。そこにコストをかけなくてはいけない理由があるからです。

また、僕はできません(やりません)が星状神経節は鍼灸治療でも使うことがあります。ブロック注射は通常25G(直径0.5mm)の針ですが、鍼灸は鍼も細いですし(ゲージでいうと34G、0.18mm辺り)何しろ局所麻酔薬を注射するわけではないので効果はかなり劣りますが、その分反回神経麻痺、腕神経叢麻痺や血管窄刺、出血などの合併症、その他の有害事象も回避できます。

しかし鍼灸治療としてはわざわざややこしい部位(前方から頚椎6番の横突起辺り)に鍼先を持っていかなくても、そこはペインクリニックに任せておいて、原因部位にアプローチするか漢方的に身体全体として考えた方(この場合だとヘルニアと言われていますから頸椎、椎間、神経根や放散する肩回りの部位など、さらにそれより前段階の過労、姿勢、加齢、体質等々を考慮しての治療)が効果的で本筋だと僕は考えます。

疼痛期はこのコラムの様に痛みから逃げたいのは当然ですが長いスパンで考えるとこれでこの問題が解決できるとは思えません。一過性の腰や肩関節痛、最近認可されたヒアルロン酸とジクロフェナクの膝の注射(商品名ジョイクル)はまた別ですが。

『痛みはだいぶ去っている。これならいいかな。と思ったがそんな状態は2,3時間で去り、また元の疼痛が戻ってきた。聞くと、1回や2回じゃ無理、20回くらい通う患者もざらですよとのこと。20回か・・・。』

『気づくと俺は中国人の気功師のところにいた。(中略)薄茶色い紙に赤マジックで何か呪いのような文字を書きつけ、これを毎日ラップで首に巻いて寝ろという』

そもそも治療の初めも整体からのようで『初めは行きつけの整体に行っていたのだが、どうにも治らず、知り合いの紹介で整形外科に行ったら「整体?あんなものはだめですよ」と言われ、かといってロキソニンとモーラステープを出されて終わり。もちろん、そんな生ぬるい治療じゃあ一向に痛みが去らない。で、麻酔注射を打ってくれるペインクリニックをネットで探し…』

『整体、整形外科、気功、ペインクリニックと渡り歩き、今、鍼灸院にたどり着いた。』

結局5つ目の選択で鍼灸治療にたどりついています。やっと出てきたかという感じですがだいたい普通の人の鍼灸治療の位置付けはこんなものなのです。

この辺りにもペインクリニックがあって、そこから何人かの患者さんが流れてきます。もちろん流れてくるわけですからそこで満足のいく結果を得られなかったという事です。当然、逆もまたそれ以上にあるかもしれません。

痛みに苦しむ患者さんにとって客観的に自分の症状に合った治療、治療院、治療家を見つけるのはなかなか難しいのかもしれません。また、松尾氏に限らず疼痛自体が心理面に及ぼす悪影響も計り知れません。

アドバイスさせてもらえるなら“併用”でしょうか。根治治療手段(があるならそれ)を選択し、痛みや不定愁訴を薬物治療でコントロールしながら、鍼灸治療などの手技療法を組み合わせるというのがいいのではないでしょうか。

急性症状(『理由はわかっている。ジムでパーソナルトレーナーを初めてつけたのだが、つい彼の目を意識して頑張りすぎたのだ』『トレーニングした翌日に首のヘルニアになってから行っていない』)からの2か月経過のはずですが第五選択の鍼治療で治ってもらいたいのですが。以降このことには触れていませんが発症からの経過時間からしても同業としても良くなっているのではないかと希望的観測をしていたら。

1か月半ぶりに触れています。『2か月めちゃくちゃ痛い鍼に通ってようやく落ち着いてきた。なにしろ、こうして原稿を書いていても泣いていない』良かったです。『めちゃくちゃ痛い鍼』ってちょっとイメージ悪いのですが、気持ちがよくても結果が出せなければそれこそ意味がありませんからご理解いただきたいと思います。

ちなみに僕の鍼は前述のとおりとても細い針を使っていますので効果はともかく、痛いと言われる事はありません。

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