昭和30年代の家族計画と妊孕性

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以前【それって臓器脱じゃない?】(2022年4月17日UP)で便失禁をしたと思って慌ててトイレに駆け込んだらお尻のお肉の間違いだったという、未だによくわからない話を書きましたが、その、治療中に何でも話せる(話してくれる)80歳代女性の話です。

好きな歌手の話から島倉千代子の話になり、「あの阪神の野球選手とうまくいかなかったのよね」という話が出たので、そんなことがあったんだと後でググったらウィキペディアに二人の間で3人の子を堕胎したことが出ていました。

細かな事情は知る由もありませんが3人も授かって一人も産まないという選択が理解できなかったのですが、次の治療の時にまたこの話になって「そういう時代だったのよ」「子供を持って人気歌手なんて仕事ができる時代じゃないのよ」と言っていました。

そのついでに「私だって二人おろしてるのよ」といきなり告白。「〇〇さん(彼女を僕に紹介してくれた近所の人)だっておろしてるわよ、□□さん(故人、彼女が紹介してくれた近所の人)」だっておろしてるのよ」と日常茶飯事の如く次々と爆弾発言。

しかも彼女は当時平井にあった近所のオカモトの工場でパートで働いていながらそういう避妊具を使うという意識や知識はなかったそうで、男性側にもそういう女性の身体の負担を考える意識がかなり低かった(というか無かった)という事実に驚かされました。

現在では全く想像できない別世界の話のように感じました。

この事実を当然この患者さんの子供さんたちは知らないと思いますが、貧困家庭という訳ではなく二人の子供さんは高学歴からの高収入です。

まさに彼女の言う「そういう時代だったのよ」ということなのでしょうか。

以前読んだ本ですが、この患者さんと同い年の子供のいなかった評論家の江藤淳夫妻にも子供に関して「あの時はしょうがなかったのよ」と夫人が後に友人に語ったという記述がありました。

その後体調を崩し婦人科の不調からの手術で子供が持てなくなり、その40年近く後に最愛の妻に先立たれ、一人になった彼は次の年に悲しい最期を自ら選択します。

妊孕性という言葉があります。あまりなじみのない言葉ですが簡単に言うとひとりの女性の持つ妊娠のしやすさということです。

そして【卵子は新しく作られない】(2023年3月3日UP)でも書きましたが、身体も卵子も歳を取っていきます。これは変えようがありません。

夫婦それぞれの事情がありますから口をはさむ権利もありませんが、若いうちは当然お金も全然ありませんが、気持ちもどん底かもしれませんが、それはそれでいいのです。

二人の間で子供に恵まれない場合もあります。

でも、それはそれでしょうがない。

長い人生においてパートナーが変わるかもしれませんがそれもそれでいいのです。仕事も変わってゆくかもしれませんがそれもそれでいいのです。

そこから何を今日からの人生に生かしていけるか、それだけなのだと思います。

参考:「江藤淳は甦える」 平山周吉 著 新潮社
   「地球で生きている」 ヤマザキマリ 著 海竜社

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