湿布と手術の間にあるもの その2

医療トピックス

【前回からの続き】

歌島医師のダメな整形外科医ワースト4、「すぐ注射をしたがる」は、僕が ワースト2に挙げられている「ロキソニンを何か月も出し続ける」と並んで整形外科医に対して日頃思うことと同じです。

「したがる」というよりも今回のコラムのタイトルの回収になるのですが、逆にレントゲンとこの注射の二つが整形クリニックの医師の独占業務の大部分であり、注射をしなければ投薬(湿布を含む)ということになります。

しかし、この二つで繋ぎながら的確なリハビリの指導やいくつかの保存療法、生活習慣の改善を提示できるのがいい整形外科(医)であると考えますが、それができているのかと問われるとそうとも言えないのが現状なのではないかと考えています。

3、「既往症を確認しない」これもただ単に面倒くさい(=医師側から見れば時間がない)のだと思います。膝や腰が痛いのはこうだからと決めつけてかかっているのかもしれません。鍼灸院であればお薬手帳の情報はまさに患者さんの履歴書であり最も知りたい情報ですし、既往歴を聞くためにこそ時間をかけているとも言えます。

確かに直接の原因はその場所、局所ですが実は仕事が忙しかったりだとか、介護のストレスだったりとかそういった身体や精神的な疲れに関するものから、糖尿病関連の足のしびれや自己免疫疾患由来の関節痛など内臓疾患に関連すると考えられるものまでさまざまな原因があります。既往症の確認は基本中の基本だと考えています。

2、の「ロキソニンを何か月も出し続ける」(歌島医師は痛み止めNSAIDsという意味で使っています)は「すぐ注射…」のところで述べましたが、結局のところセレコックスからトラムセットやサインバルタまでを患者さんが訴える痛みの度合いで処方するという感じです。

ただその処方で患者も満足してしまっている場合は特に長く処方される危険があり、それがその選択肢しかない場合ならしょうがない訳ですが、患者の求めに応じ続けてただ漫然と処方し続け、患者側も「治療する薬だと思っていたのに」関節破壊が進んでいた、という齟齬が生じることもありました。

1、「ほぼ目を見ない」 ですが結局これは大きい病院や複数の医師がいるクリニックなどで時間に追われ数をこなすのが精いっぱいでこうなっているのだと思います。個人経営のクリニックなどは今でも手書きのカルテ記入もありますが電子カルテの影響は患者さんにとっては違和感が強いかもしれません。

時間が限られているというのが問題の根本なのですが、僕はこれは結果次第つまり、見立て、治療方針、処方さえよければいいと思っていますし個人の問題だけにするのは酷な気もします。なかなか難しい問題です。

しかしやはり面と向かっているのですから人として目を見て話すのは基本だと思います。

その点から考えると鍼灸院は患者数をこなすという意味では効率が圧倒的に悪く、その一つの要因として問診、会話にかなりの時間を割く、いや、割かざるを得ないのでこの心配はありません。

と書きながら、見ているのは目ではなくてほとんど背中や腰ですが。

参考:『「中身」を犠牲にしたOA治療薬はアリか』 川口浩
    (メディカルトリビューン 2021.3.25 ドクターズアイ)

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