子供のために頑張る父親~井上ドネア戦

Uncategorized

ボクシング観戦が趣味の私はプロ入りから注目されていたこともあって井上尚弥選手の試合はすべて見て来ました。

2019年11月のWBSSの決勝戦のノニト・ドネアとの試合はキャリア初のカット(切り傷)で出血し、キャリア初のいいパンチをもらってキャリア初のクリンチ(しがみ付き)の場面もありました。

翌日の記者会見で初めて効いたパンチをもらった瞬間の心境を尋ねられて「正直、効きましたね。まあそれを持ちこたえた一つの理由は息子の存在がほんとにデカかった。あのバチンが効いた瞬間に息子の顔が一瞬よぎりましたから」「それだけ家族の存在がこのボクシングに与える影響が大きいんだと感じました」と答えています。

2014年に放送された「アスリートの魂(世界初挑戦への軌跡)」というドキュメントも以前見ていました。

トレーナーで父親である井上真吾氏は19歳で結婚し、21歳で尚弥が生まれます。父親がいなかった彼は、その時に息子には常に全力で向き合おうと決めたそうです。

「確信も何もないんです、ただ自分の出来ることを一生懸命やっていただけの事なんです」「こんな自分に家庭が出来たからやっぱりしっかりしなきゃ、それしかなかったんです」「こんな中途半端な自分に子供が出来て子供に嘘をつきたくない、そこはこだわりたいんです、嘘はつきたくないんです」と言っています。

そのドキュメントの中で95年の日付の入った、お寺の石段のようなところに二人で座っている写真が出ていました。ちょこんと座ったきょとんとした表情の小さくてとても愛らしく可愛い2歳の尚弥の小さな体を守るように手をまわして座る24歳の真吾さんのキリっとした顔が印象的なとてもいい写真です。

29年前に真吾さんが塗装業をしながら感じた子供に対するこの思いを息子の尚弥選手も初めて強いパンチをもらった逆境の一瞬で同じように感じている。

子供が生まれたから、子供のために頑張る、今までよりもうひと頑張りできる、そしてこれはなにも井上家のみならず、いわばあらゆる父親というか父性が本能的にもしくは本能として備わっているものなのだと思います。

それを裏付けるように負けたドネアも「必ずトロフィーを持って帰るよ」という息子との約束を果たすために試合後に井上尚弥のロッカールームを訪ねます。

そこで頭を下げて一晩だけ借りたアリトロフィーを横に置いた二人の息子との動画をツイッターにあげています。

幼い兄弟は「サンキュー ミスターイノウエ、コングラチュレイション!」と言って恥ずかしそうに父の胸に顔を埋めます。

ツイートで子供への気持ちやボクシングの勝ち負けに関して書いていますが、ドネアもまた子供のために戦っていたのです。これはボクサーに限らず会社員でも職人でもどんな職業でもそこは同じなのではないかと思います。

巷間では心が痛む酷い親子のニュースばかりですし殆どの親子はこんなにドラマティックではありませんが、子供を想う気持ちは同じなのだと思います。また皆そうであってほしいと願うのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました