果物はいいけれどジュースは100%でも注意

医療トピック

坐骨神経痛の50歳代の女性。元々は肩凝りや猫背矯正(とやら)で整骨院に通っていたそうですが、婦人科がん手術後下肢痛が出現し次第にそれがひどくなって5分程度の歩行が辛くなり紹介で治療をすることになりました。

主治医がメンタル系のクリニックだった為お薬を確認させてもらうと、抗うつ薬、精神安定剤、抗不安薬、睡眠薬で6種類にメトホルミンとグルメピリドの2剤(糖尿病治療薬)。

総合病院からこのメンタル系クリニックを紹介されたのが6年前、糖尿病発症を尋ねたら3年前との事でした。家庭で複数の家族の不幸などあり久々に行った区民検診でHbA1cと血糖値で引っかかり上記の2剤を服用していました。

気の毒なことに独身、長女で家族のことを一手に支えなければいけない状態だったことに加えて子宮がんに罹患してしまいました。

術後も不定愁訴と坐骨神経痛が悪化し、彼女と同居する母親(80歳代)担当のケアマネジャーが僕を知っていて紹介してくれたのでした。

リンパ節郭清の影響もあり下肢の浮腫も出ていて、加えて加齢、体重増加、運動不足に伴う坐骨神経痛と初期の変形性膝関節症がありました。両親の糖尿歴はなく本人の生活習慣による2型の糖尿病です。

向精神薬を常用する人は少なからず食欲増進からの体重増加という副作用を伴います。彼女は単に介護ストレスから食事量が多くなったのかもしれませんがそれを別にしても閉経後は相対的に摂取エネルギー、摂取する糖類、炭水化物が過剰になりがちなのです。

鍼灸治療は初めてだったのですが、2回の治療でかなり楽になりました。しかし現在は年老いた母親の年金が収入源の為、現金の治療を続けるよりも、今までのこうなるべくしてなった生活習慣を見直すことの方に重きを置いて考えました。

治療中に減量の話をした時にもテレビの広告なのでしょうか「○○○から出ている体重を減らすサプリはどうなんですか?」と尋ねられました。こういう患者さんは実際結構多く存在します。本人はいたってまじめです。

自分の活動量以上に食べ過ぎて体重が増加し、糖尿病も発症していることを考えに入れず、安易にサプリにひかれて潤沢でもないお金を使って成果を求める。そんな人がどれだけ多いかはテレビや新聞の広告(最近はネット広告も同様)を見れば理解できます。

糖尿病にしても過労やストレスは致し方ないにしても、発症は偶然ではなく5~10年以上の生活習慣の結果です。食事を聞くとコーヒーは砂糖入りのスティック式、果物野菜は手間がかかるのでフルーツジュースを飲んでいるとの事。

なるほど、糖尿病になる人はそうなる条件がそろっています。

これも以前【卵は一週間に6個まで】(2023年3月11日UP)で取り上げた「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」津川友介著、東洋経済新報社 でもメタ分析の結果がとり上げられていました。

フルーツジュースは逆に糖尿病になるリスクを高くしているのです。つまり、果物が体にいいのは決して果汁そのものなのではなくそれ以外の繊維質や生の組織をひっくるめて体にいいのだという事が判ります。

ということで、この患者さんには飲料は水かお茶(とにかく無糖)にして果物は高くても面倒でもそのまま食べる様に、体重(計測と記録)、食事量(特に炭水化物)を意識するように説明し簡単な腰痛体操をするよう指導しました。

歩行時の下肢痛は消失して喜ばれましたが、先の見えないお母さんの介護はこれからも続きます。とにかく日々の生活習慣が大切なこと、お母さんの為に無理をしないことその反動で口当たりのいいものばかり食べてしまうことの危険性とを伝え、後ろ髪引かれながらも治療を終了しました。

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