古民家に棲みつく天然の菌でつくる「酒種」を使って発酵させて「和食パン」をつくるパン屋『タールマーリー』の御主人が書いた本は、感じるところが多い本でした。
“「菌」は生きている。生きているから、環境の変化によって体調や機嫌が変わる。元気なときもあれば、元気がないときもある。素直なときもあれば、ひねくれているときもある。気温や湿度、生地の水加減、塩加減、練り具合など、朝一番に「菌」の体調や機嫌を確認するのは、一日の始まりの大切な作業だ。”
“変化が激しいのは、これまた人間と同じく季節の変わり目。急に暑くなったり寒くなったりすると、「菌」もなかなかついていけない。それで予想上に「発酵」しすぎたり、こちらの思いどおりに「発酵」してくれなかったりする。”
“「菌」は手にかかる子どものようなもの。親が子どもにできることは、愛情をもって接し、子どもが育つ環境を整えるだけ。パン職人が「菌」に対してできることもそれと同じ。愛情をもって「菌」に接し、「菌」が育ちやすい場を整えるまでしかできない。生きた「菌」の力を借りてパンをつくるために、「菌」が「育つ」場を整える。それがもっとシンプルに表現した、パン職人の仕事だ。”
『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』 渡邊格 講談社)
読みながら鍼灸治療も相手に向き合う気持ちは全く同じだとしみじみ感じました。
でも、だからこそ西洋医学では対応しきれない微妙な感覚が要求され、同じ鍼灸師でもその感じ方、判断、対応で仕上がりに違いが出てくるのだと。
細かい手作業で、大量生産もできないですが。
医療業界のボトムのロングテールのしっぽの先で地道にやっています。
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