あちこちにいい薬-SGLT2阻害薬

医療トピックス

アンチエイジングという言葉が誕生し広く使われて久しいですが、単純に見た目(特に顔など)という意味ではなく身体全体で考えた場合どうすべきなのでしょうか。

1997年頃から成人病という名前から生活習慣病という呼び名に変わったのはまさにその通りで、日々の生活習慣により遺伝体質などの素地に少しずつの肥満傾向やインスリン抵抗性が現れます。

その先に、高血圧、高脂血症、食後高血糖になり更にその先に身体のあちこちの神経症や脳血管障害、虚血性心疾患を経て心不全、脳卒中、認知症や失明、透析という結末に行き着くというのがメタボリックドミノの考え方です。

アメリカでも90年代辺りに耐糖能異常、高中性脂肪血症、腹部肥満、高血圧の組み合わせが「死の四重奏」と呼ばれ、高率で心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患に罹患しやすい目安として注目されました。

このように、食べ過ぎ、太りすぎはよくないことはだれでも理解しているのですがではこれを全て守っていれば健康もしくは老化しにくいかというとそれはまた別の要素が絡んできます。

老化というのは簡潔に言うと細胞内のミトコンドリアの衰えること=老化ということができます。その衰えに影響するのが活性酸素です。

身体活動として、細胞が酸素を使ってATPを生産する時にどうしても発生してしまうものです。

脳のミトコンドリアがそうなれば認知症、筋肉のミトコンドリアで起こればサルコペニア(筋力低下)ということです。

始めは糖尿病の治療薬として認可されましたが最近は心臓や腎臓への好影響でも注目されているのがSGLT2阻害薬です。

SGLTとは「ナトリウムと糖の共輸送体」という意味ですが、腎臓での糖分などの栄養分の再吸収(この作業が糸球体に負荷がかかる)を抑制して糖を尿の中に排出し血糖を下げると同時に腎臓への骨の折れる仕事を減らし糸球体のミトコンドリアの衰えを防ぐということがあります。

腸(SGLT1が働く)と腎(SGLT2が働く)で体の中の血液のそれぞれ30%、20%を使っており生命維持に大切な糖と塩分を吸収しているのです。

老化(ミトコンドリアの衰え)という観点で考えると、どこから衰えるのかというと、ミトコンドリアがたくさんある臓器であり、それはつまり骨の折れる仕事をしている臓器ということになります。

こうしてSGLT2阻害薬は腸と腎臓の老化にかかわっている(それを抑制する?)、さらに心臓の衰えも抑えるのと注目されているのです。2020年以降、心不全や腎臓病の薬としてもSGLT2阻害薬が認可されています。

糖尿病の治療薬ではもう60年もの歴史のあるメトホルミンも英国の研究で寿命を延ばす効果とがんを抑制する効果のエビデンスも確認されていて、サプリメント代わりに服用している医師も実際にいます。

薬をサプリメントのように使って肥満防止という考え方にはあまり賛同できませんが、老化を防ぐ、抑えるという考え方そのものは今後ますます注目されるでしょう。

怪しいものも多いのですが、最近ではNMN、ALAなど高価なサプリメントから、エビデンスのあるSGLT2阻害薬、メトホルミンなど医薬品まで大きく注目されています。

参考:『「空腹」こそ最強のクスリ』 青木厚 アスコム刊

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