色弱は個性である

疳の虫(ケンカをする、キーキーするなど)で来院していた5歳男児。施術後に母親から「色がよくわからないみたい」という話になりました。きっかけは一緒にぬり絵をやっていて「みどり」とか「ピンク」とか言ってもその色がさっと取れない、反応がちょっとおかしいということでした。

そこで数字は読めるというのでYouTubeにアップされている色覚検査をやってみました。結果はやはり色弱があるようでした(もちろん診断が出来るのは医師です)。

聞いてみるとお母さんが「父親が色弱だとうっすらと聞いたことがある」とのこと。色弱は割合ポピュラーな遺伝性の色覚症状です。日本人男性の5%、女性の0.2%ですから、クラスに男の子が20人いれば一人位いる計算になります。

色弱の遺伝子は性染色体のX染色体上にあるため、X染色体が1本の男性(XY)では頻度が高く、女性(XX)は両親から色弱遺伝子が来た時だけ発症します。

ですからこのお母さんは父親由来のX遺伝子のみ色弱遺伝子を持っている“保因者”となりますが、(このお母さんの)母親からのX遺伝子は色弱遺伝子ではなかったので発症はしません。保因者の女性(日本人女性の10%)が男の子を生めば50%で色弱という事になります。

10歳ぐらいに学校で色覚検査をするようですが、だいたい3~5歳ごろに日常生活や色の話などで「あれっ」と思います。YouTubeで見ることもできるので数字が読めるようなら確認できるでしょう。20人に1人ですし、微妙ですがハンデではないのでお母さんが落ち込む必要は全くありません。(ここが大事です)

普段は色が違うという事はわかるが色覚検査表のようにそれ自体を微妙に描いているのはわからない、特に薄めの色で描いているのは分かりにくいと思います。色弱があった僕の友人が昔、焼肉屋で肉の焼けた感じがわかりにくいと言っていたのを思い出しました。

その子の性格にもよりますがこの男の子は「君には少しわかりにくい色があるんだよ」と説明してあげると「ボク、すこし色がわからないからさー」と自分で納得してお兄ちゃんにも説明できているそうです。周りの大人も「この色は似ているから見分けづらいよね」と解ってあげるのが大切かと思います。

東大の河村正二先生の研究によると色弱(P型色覚、D型色覚)のサルは明るさや形の違いに敏感で薄暗いところで昆虫を見つけるなどは逆に色弱のサルの方が得意なことが判ったそうです。

色弱は単純に色を見分ける能力が劣っているわけではなく、色の見え方がほかの人たちと違う、異なるタイプの色覚だという事です。つまり少数派なので多数派(C型色覚)の中で生活するにはちょっとしたコツがいる時もある(かもしれない)という程度です。

その後も彼はぬり絵が好きなようで12色のクーピーを駆使してぬり絵を楽しんでいるとのことです。個性なのです。それでいいんです。

参考文献: 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 川端裕人 筑摩書房                   (江戸川区の田中眼科、田中院長の発表についても触れられています)

     『色弱の子供がわかる本』 岡部正隆監修 かもがわ出版

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