とにかく不安な心理状態

日常生活

最近、やたらと保険の広告が多いと感じていましたが、日本人は地球上のたった2%の人口で世界の生命保険料の18%を支払っているという事です。

もちろん、衣食住がやっとの国や地域は将来への対策など二の次だという事なのですが、一人当たり年間3500ドルは世界トップという事です。他の先進国はせいぜい年収1年分程度の保証が主流だそうです(だから掛け金も安い)。

日本人の年間払込保険料は1世帯当たり41.6万円、男性平均24.1万円、12万円~36万円の間という人が50.6%です。(平成25年生命保険文化センター)

保険会社のCM的に言えば大切な家族のことを考えて、悪く言えば世界で一番の健康長寿国(生命保険に助けられる確率が低いということ)なのに不安と周りの雰囲気にとらわれ易い国民気質であると言えるのではないでしょうか。

結婚したら当たり前、子供が出来たら当たり前という感じがありますがライフネット生命が生保会社の取り分(付加保険料)を発表してからそれまでいかにオイシイ商売をしていたかが明らかになりました。売り上げの30%~半分は胴元がもらうという、掛けたほうは死んだらもらえるという“逆宝くじ“です。

結婚したら、子供が出来たら生活を見直し健診を定期的に受け、健康は自己で管理する意識を高めるというのが本筋なのですが。メンタルクリニックがこれだけメジャーになる真面目な国民性ゆえなのか、更に不安なのでしょうか。この予期不安の基礎があっての保険各社の企業努力により高額の支払いが普通と考えさせられているのかもしれません。

「万が一の時あなたと家族を守ってくれる」それは国の制度で充分だろうと僕は思います。普通の人は国民年金、厚生年金を支払っていれば遺族年金のほかに怪我や病気で働けなくなった時にもらえる障害年金の制度もあります。

しかし毎年12~40万円の逆宝くじを買うことが普通なのでしょうか。結婚してから毎年12~40万円の預金、投資運用なら理解できますが、それをしているのは代表的な機関投資家である生命保険会社の方なのです(伝統的生保の資産の四割強が国債)。

今では高齢者向けの保険まで盛んに宣伝しています。「女性と高齢者は成長市場です。(略)高齢者人口は急速に増加し、非常に魅力的な市場です」(根岸秋男 明治安田生命社長 週刊東洋経済2016年)という通りおいしいターゲットなのです。

高齢者に保険です・・・。老後不安をあおるテレビ番組もよく目につきます(テレビを見るのはそういう年齢層、意識の人が多いので数字が取れるのでしょう)。新聞も一面、見開き全面までも高齢者ターゲットの終身保険か製薬会社、サプリメントの広告です。

歳をとるという事は不安になることでもあります。不安と依存は紙一重とも言えます。薬を飲んでいれば安心し、サプリメントにお金をかける。微妙な金額の高齢者用保険も同じような立ち位置なのかもしれません。

しかしもちろん、薬がすべてを解決できるわけではありません。同様に、多額の生命保険料を支払っても健康を約束されるわけではないのですが、生命保険が抗不安薬の代わりとなっているのかもしれません。本人の気持ちが収まるのならそれはそれでいいのですが実はかなり高くついているということです。

元メガバンク支店長の菅井敏之氏の著書にもこうあります。

『老後に最低限必要な生活費の平均は一家庭で月22.3万円、ゆとりある生活費の平均は月33.6万円という調査報告もあります。(中略)ところがよくよく観察してみると自分の家計の状況をきちんと把握していないままただ周囲に煽られて不安になっている人がとても多いことに気が付きます』

『本当に足りないのか?どの位足りないのか?それがわからないと外の情報に振り回されるばかりです。そもそもゆとり生活に必要な平均額は「定年」制度と同様、人さまが作ったものなのでそのまま鵜呑みにするのはどうかと思います』

『「老後の必要な生活費」とは投資信託や保険の契約を取るための常套句であることも忘れてはいけません』

『とにもかくにも自分の家計を詳しく見直してみることが先です。これこそがお金の不安から身を守る危機管理の基本です』

患者さんでも不安を訴える人に限ってそれに関する知識、現状把握、対処がないままに、だからこそいたずらに不安を大きくさせているという傾向があるのを日々よく感じています。

参考:「生命保険のウラ側」後田亨 朝日新書
   「知的幸福の技術」橘玲 幻冬舎文庫
   「お金の不安がなくなる50歳からの満足生活」菅井敏之 三笠書房
   「財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済」上念司 講談社α新書
    

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