鍼灸で糖尿病は治せるのか

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鍼灸で糖尿病は治せません(あっさり)。西洋医学にしてもいわば薬物による対症療法です。でも、来院される糖尿病の患者さんの半数以上はHbA1cが改善しています。

糖尿病ガイドラインでいまだに従来の総カロリーに基づく栄養、バランスのとれた食事を推し進めているおかげで糖質制限の食事の提案、助言、指導をするだけで本人さえやる気になればそこそこの結果が出るのです。

この矛盾、オトナの事情については眼科医の深作先生が「視力を失わない生き方」(光文社新書、第4部 眼科医にこそできること)でも書いておられますが。糖質制限を主張する医者の指導内容に多少の差はあっても、これからは糖尿病の食事療法に関しては主流になっていくのではないかと思っています。

もちろん、僕のざっくりした症例報告も定期的に鍼灸治療をするという元来健康への意識の高い患者さんなので継続して努力していく確率が高いというのがそもそもなのですが。

糖質制限は糖尿病以外の患者さんには勧めていません。僕が糖尿病以外の人の糖質制限の目的がよく理解できないというのもあります。健康ならばいいじゃないですかという事です。

糖尿病の患者さんは多いのですが医者は忙しいので血液検査のデータに目を通し薬を処方するのに精一杯です。

時々管理栄養士が食事指導などしても患者さんにはわかりにくいと評判が悪く、当然面倒なのでカロリー計算などやらずに血糖は高いままでインスリンに移行したりしています。

そういった経緯もあり私にも理解しやすかった糖質制限食を勧めてみたのが何人かで上手くいったということです。もちろんインスリンを使用している患者さんは低血糖が怖いので除外し、また高齢者が中心なので江部先生云うところのハードな糖質制限はできません。

しかし、やはり白米、パンが好きな人が多いので取りあえず

1.夜は主食無しでおかずのみ 人によっては夜のみ主食あり
2.甘いものはダメ
3.血糖値に関するサプリメントは継続しない
これを基本に来院するたび食事状況を確認してHbを毎月しつこく聞いて記録するだけです。
(3.は挫折したり成果が出なかったりする人は悪い意味で、サプリメント、トクホに依存、逃避するので話を単純に見えやすくする為です)

これだけで何人かの患者さんのHbA1cが改善されました。ただやはり糖質制限オンリーになるのも危険であるともいえます。人それぞれの病態や向き不向きが体質にあるからです。体調はやはり自分で敏感に感じるしかないのですが。

最近は高齢者においてはHbA1cを無理にいわゆる正常値に下げても予後は良くならないというエビデンスも出てきています。少し高くても大丈夫ということです。

薬も食欲を抑える薬(GLP-1受容体作動薬)や心臓や腎臓にも負担が少ない薬(SLGT-2阻害薬)の評価が上がってきて決して未来は悪くないと思っています。

参考:『炭水化物が人類を滅ぼす』 夏井睦著 光文社新書        
   『食べ物のことは身体に訊け 』岩田健太郎著 ちくま新書

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