しょぼい鍼灸院で生きていきませんか?

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江戸川区で鍼灸院を開業しませんか。鍼灸の免許を持っているけど開業していない人、鍼灸を学んでいる人、学ぼうと思っている人、何か手に職を付けたいと思っている人へ向けて書きます。

業界の知識がないと理解できない箇所もありますがご容赦ください。

僕はもともとサラリーマンでしたが3年目の25歳位であまりの忙しさ(その時はわかりませんでしたがのちのバブル景気)に「こりゃ体が持たないわ」と人生の基本である健康に携わろうと思い直し21歳のぎっくり腰以来、時々お世話になっていた鍼灸師を目指しました。

進路を決めてから学費をためる必要があったので入学したのは28歳、免許取得したのが31歳でした。国家試験の前年に会社を辞めていましたが、その会社はバブル崩壊でその後まもなく潰れてしまいました。

江戸川区に流れ着いたのは医道の日本(業界誌)にクリニックの求人があったからです。リハビリ、理学療法をやりつつ東洋医学も取り入れようとしていました。筑波の教員養成施設出身の同僚もいたのでいろいろ教えてもらいいい勉強になりました。

柔整師は整骨院、マッサージ師は出張治療のように免許を取った直後でも働くところはいくらでもありますが鍼灸師は純粋に鍼灸で食べていきたいと思っていてもインターンをする場がなかなかなく技術が身につかないので軌道に乗せていくことが難しいということがよく言われていました。

僕も平井のあと、実家の居候からまた東京に戻り江戸川区平井で開業します。何故江戸川区だったかというと、江戸川区のクリニックに2年いて平井の患者さんと面識があったこともありますが何と言ってもその時に「江戸川区三療券」という江戸川区独自の制度があることを知ったからです。

この制度は45年ほど前に諸先輩が区に働きかけて創設した江戸川区独自の高齢者福祉サービス制度で、現在は75歳以上の区民は200円で年間15回の鍼、灸、あんまマッサージ指圧の治療が受けられる回数券がもらえます。この三療券1枚につき治療者には1900円が入ってきますから、一回2100円で治療することになります。

しかしここ15年で少しずつ江戸川区三療師会の会員は減っています(現在70名弱)。

理由として挙げられるのはまず、人口構成と似ていて高齢で退会する会員が新規の入会より多いからです。しかし大きな要因は次の二つだと思います。

一つは、一回の治療で5千円、7千円など高い料金を設定したい治療家にとって後期高齢者だけとはいえ一回2100円では割に合わないと考えていれば当然入会しません。例えば駅近のキレイでステキな治療院がこの制度に乗ってこないのはこの理由です。高い料金設定で患者さんを差別化するのも重要な戦略ですから。

もう一つは、「鍼灸整骨院」として鍼灸治療もやっている整骨院(接骨院)が多いため「鍼灸のみor鍼灸マッサージorマッサージのみ」で開業するというリスクにためらうのかもしれません(区内の整骨院は310軒くらい、人口10万人当たり44軒相当)。というよりも、逆に鍼灸だけでは経営が安定しないので柔整免許も取って患者の財布からは3割以上貰わなくても済むスキームを選択するのが最適解と考えているというのが本当のところなのだと思います。

鍼灸整骨院という形態ではもともと柔整で健康保険が使えるためにこの江戸川区三療券は使えません(健康保険イコール回数無制限の三療券のようなものだからです)。鍼灸が好きで入会したのですが整骨院の方が全然儲かるということで三療師会を抜けて鍼灸整骨院を開業する人も何人かいました。

売上高だけを考えると正しい選択かもしれませんが、これも心配いりません。確かに整骨院、鍼灸整骨院がそこら中にありますが実は患者層が違うのです。つまり鍼灸整骨院で鍼灸治療を受ける人と鍼灸院で鍼灸治療を受ける人は実は違うクラスタであるために競合しないのです。

とはいえ、難しい症状の患者さん、健康に対する意識が高いマニアックな患者さんが多いのでそれなりの知識、技術、対応力が求められます。でもそれは専門の職人としては当然の事でしょう。

だからと言って名人のような高度な技術はいりません。僕も開業当初はいろいろな流派の勉強会や講習会に参加しました。理論に納得いかないところもあり結局のところ直接的には技術は身に付きませんでしたが考え方や古典の読み方は大変参考になりました。

治療も勉強も根気と集中が大切だと思います。開業資金約80万円ベッド一台、築古の一室で開業して固定費を抑えて経営の安定化を図り、同じ場所で24年。

知識と経験を積み重ねて行くことによって、お金持ちにはなれませんがストレスなく好きなことで人の役に立って感謝され定年もなく辞めたい時に辞められる。

これだけ自由に生きていければこれほど素晴らしいことはありません。

参考:『しょぼい起業で生きていく』(全2冊) えらいてんちょう著 イーストプレス

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