男性の膝の関節リウマチ

医療トピック

関節リウマチは有病率で言うと患者の80%が女性(4:1)で、診断基準にもあるとおり、朝のこわばり、3か所以上の関節炎、対称性(両側の同じ関節の部位の)炎症など、特徴的な症状で知られています。

しかし、その典型的な症状のために却って発見されにくい(診断が遅れてしまう)関節リウマチもあります。

60歳代男性、急性腰痛からの下肢痛でしたがこの症状は一週間程度の治療で改善しました。しかしその後、「実は右膝の方が痛い」との事。

出張治療だったのでベッドに寝ている状態しか知らなかったのですが、膝を見てみると患側の大腿四頭筋(中でも内側広筋)がかなり萎縮していてかなり長期的に跛行していた重度な変形性関節症だということがうかがえました。

発症は5~6年位前だそうで、前方引き出しテストも陽性(つまりグラグラ)で前十字靭帯の損傷もあるようです。

やや膝蓋跳動(膝のお皿の骨が浮き上がる)もあり関節内に水も溜まっているようですが発赤などの顕著な腫れもなく安静時痛もありません。

内側の裂隙(つなぎ目)部を押すとズズズッと関節がズレる感じがあり痛がります。

どうしてこんな状態になったのか尋ねたのですが、当然、放置していた訳でもなく整形外科を受診していて一般的な膝の変形性関節症と診断され痛み止めを処方されていました。

が「全然効かないからヤメた」との事。サポーターも同様の理由で使っていませんでした。その後不幸にも自転車で転倒して膝を打撲してから現在の杖歩行になっていました。(靭帯損傷はこの時でしょうか)

過去に大がかりな心臓の手術もしていて、それで膝が後回しになったきらいもあり総合病院の整形の医者は全身麻酔下で行われる人工関節置換術を遠回しに嫌がっているようでした。

通院治療だったので手持ちの十字靭帯損傷用のサポーターを貸して(しっかり装着して)帰宅時に試してもらいましたが、たいして楽じゃないと。

しかも痛いながらも近所へは出歩くという今までに経験したことのない患者さんで、原因も予後の予測もできずにこの膝はどうしたらいいものか・・・という感じで姑息的に通常の変形性膝関節症の治療をしていました。

そうしているうちに、心臓でもかかっている総合病院の整形の医師が炎症反応を血液検査で感じたのか先月リウマチ(RA)の血液検査をしたところ陽性だったとの事でした。

言われてみればあのズズッという感覚は昔触ったリウマトイド結節と呼ばれる独特の皮下結節だったと思い出しました。

メトトレキサート(リウマトレックス®)などいい薬が出てからリウマチで変形した関節やリウマトイド結節に鍼灸治療で遭遇することが無くなっていたので忘れていました。

しかし、この患者さんの様な運が悪いことに診断基準にかすらない非典型的なリウマチになると疑いを持った医者でなければRA検査のオーダーはしないので「なんだか進行の速い変形性関節症ですね」くらいの感じで対症療法、保存療法に終始してしまいます。

そのいろいろな要素の結果が早期治療の時期を逸してしまったこの膝なのだと思います。

この患者さんには、遅ればせながら免疫調整薬(すべての免疫を抑制する免疫抑制薬とは違い異常な免疫機能を正常化させる)サラゾスルファピリジン(250mg2錠×2回)が処方されました。

これ以上の骨破壊の進行抑制効果はあるでしょうが、壊れてしまった膝関節は元には戻りません。

結局この患者さんは右膝関節の全置換手術を受けました。

男性の膝の関節リウマチは過去もう一例経験があります。

会社員、発症は30歳代後半で疲れたり、身体の調子の悪い時に両膝に腫れと痛み(階段昇降時)が出現したので近医を受診、両膝の腫れというのがキーでこれは医者も見逃さず血液検査後、東京女子医大の膠原病リウマチ痛風センターに紹介されました。

抗リウマチ剤で管理をしながら自分の健康管理を考え直し体調管理にと鍼灸を選んでの来院でした。

当然、関節の変形など進行はありませんでした。現在50歳代で今では年に数回程度しか来院しませんが主訴は自律神経の失調(消化器系)で膝ではありません。

身体の症状には必ず原因があり、知識不足や先入観など様々な理由から不幸にもそれを見逃したりしてしまうと適切な対処を逃すことになり予後が大きく違ってくることがあるということです。

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