80歳女性。風呂場で転倒して腰と股関節を痛め、その後遺症の治療から定期的に鍼灸治療をしていました。
そんなある日、肩が辛いと急に予約が入り肩凝りの治療をしました。その時はそれで終わったのですが。
その次の治療の時に前回の治療効果を確認すると「肩の鍼は合わないみたい」と患者さんに言われてしまったのです。
自分から「鍼が合わない」と表現する人が存在するのは知っていました。しかし、それは当院の患者さんが知り合いなどに「鍼はいいわよ」と鍼灸治療を勧めた際の断りの言葉として言われたとよく聞いていたからです。
伝聞なのは当然で「合わない」という患者さんがわざわざ鍼灸治療をしに来るわけがないからです。
しかし、その「合わない」の真実は鍼が体、体質に合わないのではなく、その治療そのものが体に合っていなかった、つまりその人の体、体調に合わせた鍼ができていなかったという治療者側の責任なのです。
そして合わないとまで言わせてしまうということは効かないどころか調子が悪くなるなど却ってマイナスの効果だったということなのです。
そんな自分とは関係のない発言だとずっと思っていた言葉を8回目の治療の患者さんに言われて、いや言わせてしまった自分の治療を大いに反省することになりました。
細かいことを書いても解りにくいと思うのですが、患者さん側が考えているような結果を出せなかったこちら側の技術不足に加えそう思わせてしまったこちらの見立て、治療の甘さと、期待しか持たせなかった説明不足もありました。
そういった過程を経て治療を受けた患者さんは効果がないどころか、却ってこわばりや怠さなど副反応が強く出てしまう結果となり(腰の時はよかったが)「肩に関しては鍼は合わない」という発言になってしまうのです。
鍼治療というのは薬物で痛みの感覚を十把ひとからげに抑えるのでもいわゆる気持ちのいいマッサージの様に慰安目的でもないので刺激や処方を見誤ると効果がないどころか逆の結果になってしまいます。
今回はこの患者さんの最適な刺激量は理解していたつもりだったのですが腰部の治療だけを7回してきて、肩背中に関しては初めての施術だったにもかかわらずしっかりとした問診もせずいつもの普通の肩凝りだろうと安易に判断してしまったのです。
しかし、実は直近の御近所トラブルでかなりのストレスがかかって睡眠不足もあり体力的に疲弊した状態からの肩凝りだったのを後で知りました。
この様に決してこの患者さんに鍼治療が合わない訳ではなく微妙な患者さんの体の状態を見誤りそれに合わせた鍼ができなかった不注意、不用意な施術に起因するものなのです。
そう患者さんに思わせてしまったことを含め未熟な施術を謝罪しました。
自分の患者さんに「鍼は合わない」と言わせるなどとは思ってもいませんでしたが実際リピートしていない患者さんのなかにもいたのかもしれません。
「鍼が合わない」という人はいません。「鍼が嫌い」という人でも来院し、もちろん効果もあります。逆に訴えが適応外であればそもそも治療は引き受けません。
考えられるのは施術者の見立て違いを含む施術のミス、説明不足なのです。



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