2型糖尿病の患者さんに糖質制限の食事を推奨して10年程が経過しますが何人かの患者さんには成果が出て感謝されています。
しかし僕としても語弊があるかもしれませんが鍼灸治療で成果、エビデンスを出せない糖尿病で成果が出て感謝され半ば楽しんでいるという部分もあります。
以前は医者も管理栄養士も「カロリー制限」一辺倒で、気力も体力も衰えてきた高齢者に上から目線(とウチの患者さんは感じていたようです)で指導され煩雑でもあり、モチベーションも上がらなかったようでした。
しかし、糖質制限食を心掛けるとちょっとしたコツを掴めばそこそこ効果が出るのでこちらもうれしいのです。しかし落とし穴がありました。
先日、その中の一人の80歳代後半の女性患者さんが低血糖で救急搬送されたということを後で本人から聞きました。HbA1cはここ一年半7.1%~8.2%、随時血糖は142~235㎎/dlで推移していたのですが、eGFRやクレアチニン値などから腎機能の低下が進んでいることを知っていました。
隔週で来院する患者さんで、その前の週の夜に寒気で次の日近所のクリニックに行ったら抗生物質が出されたということ、食欲はあまりないということを聞いていました。
風邪気味なんでしょうかねとその週も主訴(側弯気味の腰痛)メインの治療をしたのですが、そのあと再び夜にフラフラになり一人暮らしの為、救急車を依頼して結局低血糖が原因だったことがわかりました。
低血糖を経験したことのない患者さんだけに危なかったです。
必ず夜に低血糖発作というのも、心当たりがあるとすれば「夜は寝るだけだから炭水化物はできるだけ少なめでおかずを食べましょう」と指導してきました。
今回の直接的な原因を挙げるとすれば、食欲不振があって食事を抜いたところ血糖が下がりすぎたのでしょう。
薬でいうと夜の服薬は夕食時のみ服用はグルメピリド0.5㎎(=アマリール、SU剤)と毎食時のボグリボース0.3㎎(αグルコシダーゼ阻害薬)でした。
ちなみに朝はネシーナ12.5㎎(DPP-4阻害薬)。どれも併用注意なのですが普通に処方されている組み合わせです。
担当医もなんだったら飲まないでという意味で血液検査の結果の紙に赤ペンで「アマリール」と書き添えているのですが、患者さんに聞くと薬はワンドーズ(一包化)だそうで、それじゃ無理でしょう。
熊本宣言(2013)以降、特に最近は高齢者の血糖管理には患者の個別性を重視して目標設定値を柔軟に運用するという論調になって来ていましたが。
今回の一件に倣って僕も70歳を超えた患者さんにはかなり慎重に、少しずつ、血液検査のデータを見せてもらいながらかなり緩めのアドバイスに方針転換していこうと肝を冷やした一例でした。
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