服薬アドヒアランス

医療トピック

新しい患者さんにお薬手帳を見せてもらうと精神的な不調を訴えるうつ系の患者さんには、パロキセチン(商品名パキシル)が出されていることが時々あります。

抑うつ患者の神経シナプスでは、放出されたセロトニンが受容体にうまく伝達吸収されずに再び取り込まれ(いわば返品引き取り)、結果として気分が落ち込むのでセロトニンだけを返品引き取りしないよう働きかけるのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤 I=inhibitor)です。

ですが。フランスの製薬会社が開発したチアネプチン(商品名スタブロン、日本では未承認)は何とSSRE(選択的セロトニン再取り込み促進剤 E=enhancer)なのです。

シナプス間隙のセロトニン量を長居させるのではなくさっさと引き取ってしまうということはうつ症状を増悪させるはずなのですが、何とプラセボより効果が大きくSSRI(プロザック、ゾロフト、パキシル)や三環系抗うつ薬と同等の効果が確認されています。

パロキセチンによくあるキツい離脱症状もないらしい。SSRIの作用機序にしても、シナプス間隙のモノアミンの減少がうつ病の原因と考えるモノアミン仮説で理解してきましたが神経可塑性説の方が正しいのかもしれません。

患者さんの中でもずっと使っている人の中には離脱症状がキツくて断念したパタンが何人かいました。

少しずつ減らして中止した人もいます。

というよりもこれは根本原因(職場環境)が改善(この場合はパワハラ上司が問題を起こして解雇)されたことの方が大きいのですが。こういった環境の変化でもなければなかなか難しいのかもしれません。

しかし、パロキセチンを使っている患者さんでも感じたことですがプレガバリン(商品名リリカ)に関しても医師側と患者側の薬への考え方、向き合い方の齟齬を感じます。

先日、腰痛がひどくなり通院を中断していた80代半ばの女性が4か月ぶりに(車椅子に乗せられて)来院しました。痛くて室内歩行のみ、寝返りも痛いから何とかしてほしいということなのですが、総合病院整形外科に通院当初はプレガバリンが処方されていましたが先月くらいから「麻薬みたいなものだからやめたほうがいい」と言われビスホスホネートのみの処方になっていました。

薬など飲まないに越したことはないのですが、処方されるにはそれなりの理由があります。自分の力不足を棚に上げてなんですが、この様などこを触っても何をしても痛いという状態の患者さんこそプレガバリン、デュロキセチンやトラマドールじゃないでしょうか。

是非、お医者さんとは遠慮なく話をして、十分納得して処方箋を書いてもらいたいと思います。その辺りのくだりをとうとうと鍼灸院で訴えられてもいかんともし難いのです。

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