いつまで続く人質司法

晴耕雨読

「人間の証明」という本が2024年出版されました。

もともとは映画でも知られる森村誠一の代表作なのですが、47年ぶりに出版された同じタイトルのこの本は1977年に同氏と二週間にわたりサイン会で全国の書店を巡り歩いた当時の販売責任者、角川歴彦(元KADAKAWA会長)が前年亡くなった森村誠一宅を訪れタイトルの使用を夫人に快諾されたという経緯をあとがきで書いています。

わずか133ページの本なのですがその中に“人質司法”とそれを漫然と許容し繰り返してきた検察と裁判所への心の底からの怒りと残りの人生を賭けた戦いの誓いの本なのです。

短いページ数だけに尚更ぎっしりとこの国の異常な刑事司法制度の無謬性がいかに危険であるかが述べられています。

全く身に覚えのない罪で逮捕され小菅拘置所に226日間拘留され「捜査機関のストーリーに沿った虚偽の自白」、これだけのために人権も無いに等しい扱いを受け精神的にも肉体的にも追いつめられるのです。

逮捕の2年前に胸部大動脈瘤の手術をしている79歳の著者は拘留中に三度倒れ二度入院しています。

何度も倒れ保釈請求も何度も棄却され医務室で思いを漏らすと医師には「あなたは生きている間にはここから出られませんよ。死なないとここから出られないんです。生きて出られるかどうかは弁護士の腕次第ですよ」と冷ややかに告げられています。

先進国と言われ安全で治安がいい、住みやすいと言われるわが国でこんなひどい権力の行使があるのか、そしてそれを抑止する機能も反省も無いという異常と恐ろしさをこういった手記、告発の本を読むたびに強く感じます。

取り調べで弁護人の立ち合いが許されないのは先進国で日本だけ、起訴前の勾留期間の長さも断トツで長くこの日本の“人質司法”は海外から中世の名残りとまで批判されています。

逮捕、起訴されても有罪判決が確定するまでは無罪と推定される被疑者、被告人は法律上は一般人と何ら変わらないはずなのにです。

日本の人質司法に絶望したカルロス・ゴーンはあのような形で国外脱出するしかなかったのでしょう。

翌年国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が「四度にわたる逮捕と勾留は明らかに不当」とする意見書を出しています。

2023年国際人権NGOと冤罪被害者を支援する国際組織が開催した「人質司法サバイバー国会」で登壇した厚労省郵便事件の冤罪被害者、村木厚子さんの言葉に筆者は耳を疑います。

無罪確定後、村木さんと会った検事総長が「無理がかかっているのは分かっていた。だけど中からは変えられなかった」と語ったそうです。

これはどこかの不正をした企業の上層部が言っているのではなくて検察のトップが自ら認めているのです。

この刑事司法が全く自浄作用を失っているのを改めて理解した著者は、国内外の組織と世論に訴えて外から変えていくしかないと「人質司法違憲訴訟」を起こすことを決意しています。

旧ジャニーズ性加害問題でも長年、国内でいくら訴えても最高裁で有罪判決が出たにもかかわらず全く動かなかったマスコミ、検察に愛想をつかして国内ではなくアメリカネバダ州で訴訟を起こしたように。

検察のリーク情報を伝えるだけのいわゆるオールドメディア報道と違法捜査による自白を取るための代用監獄と化した拘置所勾留の人質司法は「大河原化工機事件」でも冤罪で十一か月の勾留で悪性腫瘍と診断された経営幹部が亡くなっています。

検察の手柄のために事件(ストーリー)をつくりあげメディアにより人民裁判にかけその後も罪を認めようとしていません。

村木さんの事件後の損害賠償訴訟では損害賠償訴訟では争わず国が賠償金を支払っています。つまり税金からです。作り話なので争いようがないのです。

現代社会とは思えない深い検察の闇を下記の本で垣間見ていただきたいと思います。

参照:「人間の証明 勾留226日と私の生存権について」角川歴彦 リトルモア

「負けへんで!東証一部上場企業社長vs地検特捜部」山岸忍 文藝春秋

「国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて」佐藤優 新潮社

「汚名 国家に人生を奪われた男の告白」鈴木宗男 講談社

「徹底抗戦」堀江貴文 集英社

「私は負けない『郵便不正事件』はこうして作られた」村木厚子 中央公論新社

「告発!検察『裏ガネ作り』」三井環 光文社

「人質司法」高野隆 角川新書

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