ポスドクのギックリ腰の原因

日常生活

急性腰痛(ギックリ腰)は精神的ストレスや慢性疲労などのダメージの蓄積が基本にあることが殆どで、重量物の挙上や発症時の体勢は単なる引き金にすぎないということは以前にも書きました。

論文執筆中の30歳代ポスドクが深夜にキッチンへ行って立位で水を飲んだ途端に腰部に激痛が走り、床に崩れ落ち(診断名は腰部椎間板ヘルニア)、一週間ほど入院し退院してからの治療依頼。

20歳代ですでにギックリ腰は経験していて年に一度程度は腰の調子が悪かったとの事。肩凝りと偏頭痛持ちでもあり、当然「長時間の坐位が辛い」「足がつれる」「雨が降ると痛みが強くなる」「身体全体が疲れで重い感じ」という愁訴の数々でした。

腰椎(骨の部分)はしっかりしていていましたが、それを支える両サイドの筋肉の硬結がひどく、ストレスフルなギックリ腰にありがちな腰の様相を呈していました。当然その他の筋肉の状態も推して知るべしです。

話を聞くと「5年契約の公務員」のような立場らしく、心理的に不安定な状態であるとの事。次の5年の為には成果を出さねばならず、といったニュアンスで溜息とともに話していました。

結果的には8回程度の治療で改善することができました。これは治療の効果というよりもその後また引き続き同じ職を得られたらしく、腰痛の原因である精神的ストレスの大元(この先の雇用の不安)さえ除去されれば、結果として身体は元の健康な状態に戻っていけたのだと思います。

それからは年に数回来院する程度で、その後声がかかることはありませんでした。きっと以前のように強い精神的ストレスから解放されて仕事をしているのかもしれませんし、不安に思ってもそれを受け入れることも含めて対抗できるメンタルを持てたのかもしれません。

ジョギングや水泳を始めたとも聞いていましたのでそういった自助努力で健康状態が改善されたのかもしれません。

いずれにせよ、収入が安定しているということは精神的にも肉体的にも安定という面で大きなウェイトを占めるということを再認識した症例でした。

参考:(というかこの症例を思い出したきっかけ)『バッタを倒しにアフリカへ』前野ウルド浩太郎著、光文社新書

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