70歳代女性。1か月前より「右足の裏が痺れて痛い」「整形外科で痛み止めと湿布をもらったが良くならない」という訴えで来院されました。
下肢の痺れは日常の臨床でもよくある訴えで、腰痛も以前からよくあるとの事でこれは一般的な脊柱管狭窄症もしくは変形性腰痛症に伴う坐骨神経痛の症状だろうと考えました。
足の裏のどの辺りが痛いのか確認してみると、踵から先が痛いがシールが貼っているような違和感、不快感〜細かい石を踏んだような痛みがあるとのこと。
末梢神経ということで糖尿病も疑いましたがその既往はないとのこと。
腰部に原因がある場合は下肢のどこかに痺れや痛みを感じることが多いのです。
この患者さんの場合は急性のせいなのか痛みの方が強かったのですがまず原因として最も考えられる腰を中心にやってみますと提案しました。
しかし腰椎やそのすぐ右側の予想した辺りに反応(圧痛など)がありません。
ひと通り予測に基づいて治療をしましたが直後効果も無いようでした。
数日後の2回目来院時も腰痛は改善したのですが主訴の足裏の痛みは変化がなかったとのこと。
その時、うつ伏せで治療をしていたのですが足首辺りの鍼をしている時に左右の足首の角度が微妙に対称でないことに気が付きました。
右の足首がほんの少しなのですが外反している(外に向いている)のです。
仰向けでもうつ伏せでも足をそろえた時左右に違いが出るのは結構あって、人により側弯や股関節、膝、足関節などいろいろな要素があります。
だから良くないというものでもありません。そもそも歳を重ねると多かれ少なかれ歪みは出てくるものだと思っています。
生活していくうえで不都合が無ければ左右非対称でも別に構わないのです。
この足関節の変化でこの患者さんの場合は原因はここかもしれないと考え、待合室へ行って靴を見てみるとやはり右側の靴の踵だけ内側が減っていました。
内くるぶしと踵の間の辺りを人差し指でトントンと叩くと例の痛みが放散しました。これをチネルサインと呼びます。
通常でも少し響くことがありますが神経が通っているためでそれは問題ありません。
この足の痛みの原因は足根管症候群による脛骨神経からの症状がでていたのでした。
そもそもの原因は少し右の足首が外反気味であったこと、プラスそれによる歩き方による負荷と加齢だと思われます。
治療としては右足の内側だけを高くしたインソールを取り寄せ使ってもらい、家では床に置いたタオルを足指で手繰る体操をやってもらいました。
定期的な治療と生活指導で無理さえしなければ日常生活は苦が無く送れるまでになりました。
引き続き歩きすぎと体重の増加には気を付けるよう伝え現在に至っています。
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