患者さんあるあるに「昨日のテレビで~と言っていた」「~をすると~にイイと言っていた」というのがあります。週刊誌や健康雑誌の切り抜きを持って来て「こんなこと書いてあるんだけど・・・。」と見せてくれる患者さんもいます。
よくニュースなどで「~が~に効果があった」という類の発表も、マウスの実験でこうだった、試験管の中ではこうなったというのは確かにエビデンスではありますがそれが実際の人間の身体にどうなのかはそこからずっと先の話です。
以前、開業医と話をした時に「一番嫌いなテレビ番組はNHKのガッテンだ」と言っていました。その気持ちよくわかります。
それにとび付きテレビ番組にいちいち反応していては、やれバナナだ、やれ納豆だ、チョコレートだとキリがありません。そして最も危険なことは一つ覚えのようにそれだけに囚われて偏ってしまう事です。そういう人は基本的に冷めやすくもあるので長続きはしないのですが。
ポテトチップスが発がん性物質のアクリルアミドの含有量が多いだとか、マーガリンがトランス脂肪酸で食べるプラスチックだとか、赤い肉は大腸がんの原因だとか、確かにそれは毎日大量に長期にわたって食べるとそうなのかもしれません。
しかし、それを気にして目くじらを立ててストレスをためるよりも美味しいと感じて普通の生活で普通に食べる位、なんてことはありません。何故なら、どんなに食事や生活に気を使っていても歳を取れば誰でもがんになりうるからです。
以前によく「うちはがん家系じゃないから・・・」という患者さんがいましたが、高齢化の進行とともに2人に1人が何らかのがんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代になりました。35年間ずっと死因の第一位です。(日本対がん協会HPのデータより)
がんになりにくい食事、生活などと言われますが少なくとも日本人の多くはすでにそれを守っていると思います。でも加齢を避けることだけは不可能です。対策としては定期的な検診(健診じゃない方です)でしょうか。
喫煙者(含電子タバコ)もリスクを理解して吸っていますし、大量飲酒者もそれを理解して飲んでいます。それでいいのです。“健康だったら死んでもいい”という健康マニアへの皮肉がありますが、健康は楽しく生きる手段ではありますが目的ではありません。そこにもう少し緩さがあってもいいのではと思います。
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