満腹時血糖は重要

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以前40代後半男性(遺伝性末梢神経の難病患者さん)の訪問治療をしていました。2型糖尿病もあったのですが自分でインスリンを打つことができないので訪問ヘルパーさんに打ってもらっていたようなのですが改めてチェックが入り看護師か家族以外は不可とのこと。

ベッド上の生活で手足も不自由、しかも独居なので打てるのは訪問看護師だけですが週に3回までしか訪問できないらしく、1日1回のインスリンはそもそもできない。仕方がないのでインスリンを止めざるを得なかったのです。そこでメトホルミン(ビグアナイド系)とピオグリタゾン(チアゾリジン系)の服用に変わりました。

すると食欲が低下し血糖値のピーク(食後1時間)が180まで達しないようになり結局インスリン無しでも160以下に落ち着きました。この結果をどう考えればいいのでしょうか。もともとインスリンが必要ではなかったともいえるのでは・・・。

周囲も低血糖だけは心配していましたが、食事には介入しないので食後血糖値が上がりインスリンで下げる、血糖が下がって空腹を感じるので食事量が多くなる、それをまたインスリンで下げる・・・。持続的に体外からのインスリンが増えてゆき膵臓の働きの低下を招くのではないでしょうか。

この患者さんはたまたま諸般の事情でインスリンから離脱できたのですがあのまま続いていたらまた違った予後だったかもしれません。

食後の血糖値が急激に上昇するいわゆる「血糖値スパイク」が危険であることは北里大学研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生をはじめ「平穏死」の長尾和宏先生や足立区友愛病院の水野雅登先生など糖尿病対策として糖質制限食を推奨する先生が指摘しているとおり、血糖値の急上昇、急降下が動脈の内壁にとって大きなリスクとなり動脈硬化を引き起こすのではと考えられています。

健診ではとにかく空腹時血糖ばかりに注目しますがそれだけで問題がないと思うのは危険なのではないでしょうか。医師の前では正常血圧に下がっている仮面高血圧が危険なように空腹時血糖の結果のみで自分は糖尿病は大丈夫だと思っていると実はピーク(満腹時≒食後血糖値)がかなり高くなっていても今の健診では見つけられません。

これを調べるには食後1~2時間後の血糖値を調べる以外に今のところ方法はありません。HbA1cが6%辺りの方はかかりつけ医に相談してみるといいかもしれません(もちろんブドウ糖負荷試験でも可)。ピークが170以上で尿糖が出るとされているので、食後1時間血糖を測れない時は市販の尿糖検査紙でも確認できます(AmazonだとTERUMOの新ウリエースGaで約22円/枚)。

ピークが180を超えると合併症(腎症、網膜症、末梢神経障害)が出現すると言われているのでとにかく一気に血糖値が上がらないような食生活、食習慣が重要になります。そのため糖質制限食が重要視されています。

ちなみに高齢者の糖尿病患者におけるHbA1cの目標値は緩めがいいというJAVA(米国医師会雑誌)の二つの論文を西伊豆健育会病院長の仲田和正先生がまとめてくれています(Medical Tribune 2017.1.24)。

それによると余命が15年未満(つまり男性65歳以上、女性70歳以上)ではHbA1cを7%以下にすると死亡率が上昇する、7.5%~9%の間で利益は最大で害が最も少ないとのこと。この考え方の流れは4年後の現在でも変わっていません。
もう1本は安全性、安さで2型糖尿病第一選択薬はメトホルミンがいいという論文。こちらは毎年いい薬、その評価がいろいろ出てくるので専門の医師と意識を共有することが大切だと思います。

いずれにしても本人の糖尿病に対する意識が重要で、それが医療関係者にどれだけの対応をさせるかを左右すると言えると思います。

患者さんが長い病気との戦い(付き合い)で大変な思いをしているのも解るのですが特に糖尿病は最近の糖質制限食や新しい薬でかなりのコントロールが可能になり、より患者さんの糖尿病の克服への意気込みが結果になって表れやすくなったと言えます。

参考:「薬のやめどき」長尾和宏著 ブックマン社

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