以前、鍼灸師から傘屋(メーカー兼販売)になって成功したという人の本を読んだことがあります。ふつうは鍼灸治療で大成功したら、そのままその道を突き詰めて行こうと考えるのだと思いますが、そこから全くつながりのない傘を作ってしかも製造、流通でも従来にないアイデアを出してそこでも成功する。そんな内容でした。
こんな人っているんだなと同じ鍼灸師としてとても驚きました。しかし、この人にとっては仕事という意味でも、相手の求めるものを提供するサービスという意味でも同じことなのかもしれません。
成功する、仕事がうまくいくというのはうまくいくように持っていける考え、心構え、取り組む姿勢なんだなとしみじみ思ったものでした。
だから成功する人は何をやっても最終的には成功するのではないかと。そしてその後に読んだのが 『 ルワンダでタイ料理屋をひらく 』 唐渡千紗著 左右社 です。
自分がチマチマ生きているのでこのジャンルの本はとても惹きつけられます。マイクロソフトを辞めて古本を集めて貧しい国のあちこちの学校に送って図書室を作る活動家の本だったり、バングラデッシュで日本の消費者に合わせてデザインしたバッグを生産し日本で販売する会社を立ち上げた日本人女性の苦労と奮闘を記録した本を興味深く読んでいました。
しかし、今回もまた、とてつもないエネルギーの持ち主の女性でした。似たような境遇の人(個人事業主、シングルマザー、大企業の一サラリーマンなど)には特にそれを強烈に感じられるかもしれません。
何しろ5歳の息子がいる30歳のシングルマザーが(業務内容を読めばどこかすぐわかる)大手企業を辞めて、その会社で同僚だった夫婦が移住してそれぞれ事業を興していたアフリカのルワンダに移住しようとなり、その元同僚に料理店をやりたいんだったらと提案されたタイ料理店を開くという話です。
しかも店舗の内装を基礎から水回りから施工依頼するところから。案の定、工事代金を仲介業者に斡旋されたケニア人に持ち逃げされ、厳選した従業員も日本人の感覚とは全く違うルーズさ。店の貸主もまた同様に。
そして1994年の大虐殺で家族を殺された人々が負う心の傷。現地女性がシングルマザーばかり問題や次から次へと問題が発生しそれを何とか対処していきます。まさに展開は息をつかせぬ映画のよう。
そもそもタイ料理をやると決めてから料理教室に通って覚えたくらいのざっくり過ぎる、ただ勢いなのです。しかしこの勢いが凄い。やりたいことが見つからないという人が多いなかで、とにかく思いついたらやってみる。しかもやると決めたらとことんきっちり、しっかりやるのです。
彼女は「それが自分にとってしっくりくるかどうかはやってみないとわからない」「それがはたして私らしいのかはアウトプットからしかわからないのだから」と書いています。
映画のようなあまりのトラブル続きで「もうやめた!」となりますがそう決めてオペレーションから一歩引くと自分なしでもお店が回っていることに気付きます。そこから軌道に乗ります。というか知らずに突っ走っていたらそういう環境でもちゃんと人が育っていたのです。ここまで持ってこれたその情熱に感服するばかりです。
さらにあの世界的な新型コロナウィルスの影響で外出禁止令。それもテイクアウトを強化し乗り越えて気が付くとあっという間の5周年。
行き詰ったサラリーマンで迎えたシングルマザーの30歳でこれでいいのかと取ったリフレッシュ休暇で元同僚のいるルワンダに行ったばかりに起業とアフリカ移住がセットでスパークしてしまったのです。自信がついたらやろうではいつまでも始められないと書いています。
この何でもやると決めたらやってみようという気持ち。実際やってみなけりゃ何もわからないですよ、ということなのだと。そしてプロモーション、オペレーションの努力。その為の筋トレは大事と書いていますが、中途半端だと思っていた30歳までのサラリーマン生活が地道で重要な筋トレになっていたのだと思います。
飲食店に限らず個人事業の方、こんな私に何ができるのとお悩みの方は、ぜひご一読を。
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