90年代から物忘れ(認知症)外来で多くの患者さんを診てきた高井戸にある浴風会病院精神科の須貝佑一先生の本を以前読んだことがあります。
50~60代は差はほとんど出ませんが70代あたりから認知症の前駆症状(MCI)が出てしまう人、またMCIと診断されてもその状態を維持する人、そこからアルツハイマー型認知症へ進行してしまう人の差は何があるのでしょうか。
アルツハイマー型認知症はアミロイドβというタンパク質が脳に溜まって発症するのですが実は発症の20年前から溜まり始めているのです。
脳の機能が衰えるにつれて、この不要なタンパクを分解できなくなります。
医学的にはこれを除去、溜まらないようにする薬の開発に力を注いでいますがなかなか厳しい現状なのです。
一方、生活習慣の改善で発症進行のリスクを減らせることが解明されていて、日々の心がけによって進行を防ぐ可能性が高くなるということなのです。
MCI~認知症の発症機序をふまえると40代~60代の頃から手を打つべきであるということになりますが、70代80代は手遅れかというとそうではありません。
症状が出ない人、進行しない人は良い習慣を身につけている人が多いということです。
良い習慣とは何かというと、何か一つのことにでも深く打ちこんでいる人や様々なことに興味を持つ多趣味な人はやはり認知症が少ない、進行しないということです。
例えばフラダンスなど大会があり適度な緊張もします。日頃から練習をします。有酸素運動です。そして社交の場でもあります。
自営業や農家などずっと仕事を続けている人などもそれが全て適度ないい習慣になっているといえます。
そう考えると、認知症にならない人、なっても進行しない人というくくりで考えていましたが、これは結局「老化しない人」と同じではないかと気付くことになります。
さらに言うと「良い習慣」というのは脳にとっても筋肉にとっても骨にとっても内蔵にとっても良い習慣であると言えるのです。
受け身型ではなく積極的にアウトプットをする。その為にはインプットする、外からの刺激を受け入れてそれに適宜対応する。
これが動物として生きていくうえで重要なことなのです。
もちろんこれはあくまでも適当な刺激、適度なストレスであり、そうでなければ疲弊してしまいます。
適量という意味では食事も同じで低栄養もサルコペニアや身体的フレイルとして時折問題になりますが、食べすぎは老化の原因である活性酸素を増やし脂肪細胞を蓄積させるなど逆に認知症のリスクを高めます。
いい習慣や適度な刺激というのは一朝一夕に出来るものではありませんが、意識するかしないにかかわらず健康な人は日常生活で出来ているということです。
つまりそれが生活に組み込まれて溶け込んでしまえば、それはそれでこんな素敵で無敵な生活パタン、ルーティンはないとも言えるのです。
日常生活に鍼灸治療を組み込んで来院する患者さんを見ながら日々それを感じています。
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