医学サイトMedicalTribuneに「電気鍼がうつ病患者の不眠症に有効」という記事が出ていました。
大体こういった世界に発信される東洋医学系の論文のほとんどは中国発なのですがこれも上海大学の伝統漢方医療のチームのようです。
詳しくは書きませんがやり方は従来と同じような方法(ランダム化臨床試験)で、このテの論文は昔からあるのですが医療界ではなかなか鍼灸治療への評価は変わりません。
身も蓋もなく言うとその大きな理由は薬を使った方が個人の技術も関係なく手っ取り早いからでしょう。
今回の本題はそこではなく。
鍼灸治療をしてみたいのだがこんな症状はどうなのだろうか、どのくらいやれば効くんですかという問い合わせをしばしば受けます。
なかなか込み入った微妙な表現で症状を訴える患者さんも多く、わざわざ鍼灸治療の質問をしてくる患者さんは、現代医学がカバーしていないそういう領域のほうが多いのですが。
そのような何とも言えない症状に対しては「体を触ってみて治療をしてみないとわかりませんが・・・」と答えるしかないのです。
これはどういう機序で効くんですかというザックリした質問の答えにも通ずるものがあります。
自分では知らず知らずのうちに不調になってしまったその原因になる生活習慣や身体の使い方を今一度改める、見直すためにきっかけを与えているのが鍼灸治療ではないかと考えています。
そういう意味で西洋医学では対症療法しかない症状や前述のような込み入った微妙な症状も改善したり良くなるきっかけになったりすることも多々あります。
体の不調、出現してくる症状というのは偶然ではなく条件が満たされて初めて症状として出てきます。
たまに「何も悪いことしていないのに」と自分の愁訴を嘆いてこぼす患者さんがいますが厳しく言えばやはり何らかの負荷がかかっていたのです。
少なくとも歳をとるという避けがたい負荷だけはかかっていますし。
その為にも深い呼吸ができるような生活環境に戻す努力、もしその余裕がなくてもせめて十分な睡眠時間、一日のモヤモヤをリセットするための時間を持つ。
そしてそれがダメならもしくはそれでも不具合が残るのなら鍼灸治療を時々その生活に組み込むことも選択肢の一つです。
鍼とお灸の治療ですから特別なことをするわけでもできる訳でもありません。
ただ様々な愁訴に対して話を聴き体を診て何がその不調の原因になっているのかを共に考えて症状が出るまで少しずつかかっていた、かかり続けていた負荷を取り除くべき生活上のアドバイスの提案と鍼灸治療をする。
結局のところそれが鍼灸治療であり全身治療、全体治療です。だからこそ様々な愁訴に対抗できる理由でもあるわけです。
体が本来の状態に戻ろうとするちょっとしたきっかけを体と心に与えることができるのが東洋医学であり鍼とお灸なのだと考えています。
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