80歳代の患者さんが先週、その二週間前と二回に分けて片目ずつ白内障の手術をされました。術後の調子もいいようで何よりです。
この女性は腰下肢痛があり最近はふらふらするということで、一人暮らしなのでどうしたものかと平井、小松川地区の地域包括センターに相談に訪れたのです。
そこのケアマネジャーからの紹介で来院されました(包括センターと当院は30m程度)。
70歳まで仕事をしていたということで無理をしてきた分仕事を辞めた途端に病気が見つかったり、ここ10年でいろいろ不具合が出てきたようです。
前年にも転倒して手指を骨折しているとのこと。
使っているシルバーカーを見ると小さくて古くて操作性がいいように見えなかったので、軽くて操作性がいいものに替えてもらうよう提案しました。
近所付き合いもほとんど無かったため介護サービスなど全く考えなかった(自分は当てはまらないと思っていた)そうです。
そうこうしているうちにコロナもあり家にこもりがちになり足腰が衰えるという悪循環になってしまったようです。
前回の認知症の時も書きましたが、ヒトも生き物ですから例外なくいずれ必ず終わりがあります。
必ず終わるのですが、しかしその認知機能の下り坂、筋力低下という下り坂、つまり日常生活動作(ADL)の下り坂、ひいては生活の質(QOL)の下り坂を少しでも緩やかな傾きにすること。
それがちょっとした心がけで可能であるとすれば、ひと工夫やってみようかと思わないでしょうか。
それが日々の充実につながり、動けば食事も睡眠も入浴も、生活すべてに連動して少しずつですが違ってくると思います。
この患者さんもお薬手帳を見せてもらうと精神科のクリニックにも長く通っていてベンゾジアゼピンが処方されていました。
眠れない、不安だと訴えると当然お医者さんは薬を処方します。
よく眠れるので継続し、依存性が出現し、日中のふらつきなどもよくある副作用です。
この患者さんの訴えるふらふらは加齢による筋肉量の低下(サルコペニア)かもしれませんが多数薬剤投与(ポリファーマシー)の影響もあるのではないかという事です。
4、5種類以上の薬を出すと眠剤、安定剤の有無にかかわらず転倒リスクになります。
転倒予防という意味においては今回の白内障の手術は視力回復という転倒リスクの軽減にも大きなメリットがあるのです。
しかし長期的には日常生活の中で体を動かすこと、具体的には雨の日以外は毎日買い物に行ってくださいと。
雨の日、寒い日は筋トレ、バランス訓練をいくつか提案し、テレビを見ながらでもできるストレッチも指導しました。
週一回の治療を開始して一か月経過すると「3回ずつ休んで買い物行ってたのが2回ずつになった」と言われ。
二か月目には「鍼やってから肩が凝らなくなった」と言われました(微妙)。
腰をメインで治療しているのですが、基本的に鍼灸治療自体が全身治療にもなっているので往々にして意図していない部位に効果が表れることがあります。
シルバーカーの操作性がよくなったことと下肢に力が入るようになってシルバーカーにつかまっていたのが肩の力が抜けたからではないですかと説明しました。
女性高齢者の健康において重要なことの一つに骨粗鬆対策があるのですが、その大元には骨折予防のための転倒予防があり、そのための「下肢の筋肉の維持」があるのです。
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