痛み止めとしてのデュロキセチン

医療トピックス

膝関節の痛みは二足歩行の人間にとって腰痛と並んで整形外科的痛みの二大テーマと言えると思います。

特に平均寿命が延びた現代では年間10万件もの膝関節の手術が行われ、特に女性にとっては決して珍しいものではなくなっています。

同時に手術(骨切り術や全置換術)にならないようにするにはどうしたらいいのかを繰り返しになりますが提案したいと思います。

基本的には加齢により膝の軟骨がすり減って痛みが出現するのですが歳をとることそのものの他、歳をとってからの体重増加や仕事や趣味など膝にかかる負荷によって発症しやすくなります。

初期~中期では西洋医学的には湿布、痛み止め、運動療法、注射です。

新聞などで毎日のように広告をしているサプリメントが気休め以外に効果がないのは常識として理解できると思います。逆に言うと心の持ちよう(プラセボ)がいかに影響するかも理解できます。

痛み刺激は脊髄を通って脳で痛みとして感じますが、やがて脳幹から痛みを抑える物質が出て痛みの感覚が抑制されます。

しかし痛み刺激が持続することによってこの痛みの抑制機能の不具合というか対応不全により、少しの痛みでも強く感じるようになります。

この機序は中枢感作というもので数か月程度の痛みが持続すると変形性膝関節症としてはあまりない夜間痛や安静時痛として感じることもあります。

この厄介な痛みに対して2016年からデュロキセチン(商品名サインバルタ)という薬が保険適用され多くの強い痛みの患者さんに処方されるようになりました。

高い効果を上げるかと思いきやこれがまた文字通り中枢に働きかけるため、眠気やめまいふらつきなど副作用も強いのです。

これは元々SNRI(セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬のため当然ながら精神症状にも影響してしまうのです。

こうなってからの膝関節はかなり厄介です。腰下肢痛に関してはサインバルタ処方からの脱出は以前にも書いた通り鍼灸治療でも改善可能な場合も少なくありません。

ですが、こういった膝関節のケースではヒアルロン酸やステロイド注射でも効果が得られなかったというのが多いからです。

そういう状態になってしまってはその後の鍼灸治療の効果も確率として低いものになります。

膝の変形性関節症は加齢とともに少しずつ進行していきます。その進行を遅らせるためにその人個人に合った対処と運動(質と量)が大切で、そのためにも時々のチェック、医師でもPT(理学療法士)でも鍼灸師でもいいのですが(知識と愛!がある)信頼できる医療従事者の存在というのが重要になると思います。

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