眼瞼けいれんは何故起こる

医療トピック

以前【自己承認欲求のワナ】(2021年4月26日UP)で自分の身に起こった眼瞼のけいれんの事を書きましたが、うかつにも10年ほど前に騙されかけたこのインチキ商法(取材商法)が数年前でもいまだに地味に存続している事を知りました。

それは、あおり運転で有名になった男が、その自称広告出版社とやらが作った誰も見ないビジネスサイト風のウェブページに自分の会社の広告(のように見えない広告案件)を出していたということで、対談している風の元阪神のプロ野球選手がとばっちりで迷惑しているというニュースが報道されていたからです。

閑話休題。あれ以来僕には眼瞼けいれんは出現しませんが、患者さんは来院時に時々訴えられます。男女半々、30から40歳代が中心という感じです。

実際これは病的な眼瞼けいれんではなくて眼瞼ミオキミアだと考えます。やはり原因は精神的なストレスがメインだと思います。もしくは過労つまり容量を超えた心労、労働でしょうか。

これに対して病気としての眼瞼けいれんの場合はそういった瞼の不随意運動が必ずしも目立つ訳ではなく、それ以外に眩しい、眩しそうな表情、痛い、しょぼしょぼする、目が開けにくい、早い瞬きを続けてできない、乾く感じなどの感覚異常を訴えます。

もちろん間欠的にウインクのようにぴくぴくけいれんして辛いという患者さんもいます。ボツリヌス療法でも改善しない患者さんの場合は鍼灸治療単独では効果持続が認められませんでした。

判りにくい眼瞼けいれんは、症状も常に出ている訳ではないので普通に眼科に行ってもドライアイ、眼精疲労、加齢性の眼瞼下垂などと診断されていることも多く症状がなかなか改善せず困っている患者さんも多いと思われます。

原因としては脳の誤作動というか神経回路の不調不具合があります。愁訴に精神症状も含むことが多く、けいれんや感覚の異常と合わせて対処、治療が難しくなっています。

そういう経緯も含めてこういった患者さんはベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬、安定剤を使っている患者さんが多く存在することが知られています。

これらの薬は脳のGABA-A受容体に作動する薬物ですが、これらの薬はそこそこ気軽に処方してもらえる時代になりました。

例えば家でテレビを見ながらウトウトして昼寝をしながらも夜眠れないと訴える高齢の患者さんなどは、それで眠れなくても問題ないのですが、そう訴えられると正論は患者さんに忠告されることはなく、安定剤やら次の抗不安薬が眠剤として処方されていることも少なからずあります。

しかしこれがまた離脱症状がありやめられないのです。ネット検索するとそれらの薬と「離脱」はセットでたくさんヒットします。

そのことは医師も勿論知っていますが、何しろ薬以外の対応も面倒ですし、切れ味がいい(きっちり効く)のでなかなか出すのをやめられません。キッチリと脳に切れ味よく働く薬というのは得てして副作用もキッチリ切れ味鋭く体に刻み込まれることが多いのです。

しかしそれでは先に楽しみがありません(と僕は個人的に考えます)。抑うつの前駆症状としての不眠、辛い時期の期間限定の服用や根本的に解決できない原因がある場合はしようがありませんが、原因を放置して漫然と服用し続けるのは当然解決にはなりません。

認知症のリスクも高まるとのレポートもありますが、それは脳神経に働きかける薬物を毎晩摂取していれば、素面で身体のリズムに合わせて自然に寝起きしている人と比較してもそういう傾向が出やすいのも当然と言えば当然で、医療業界でも注目されていることにも納得がいきます。

参考:『その目の不調は脳が原因』 若倉雅登 集英社新書 
    「どう防ぐ?薬剤性認知障害」 Medical Tribune(2019年8月28日)

コメント

タイトルとURLをコピーしました