以前読んだ本に、不健康になった自分を変えるために自ら実践して確かめた食事に関する細かい内容が提案されていた『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』(デイヴ・アスプリー著 ダイヤモンド社)というのがありました。
その中で放し飼いの鶏卵はグラスフェッド(牧草飼育)の牛、ラム肉とともに完全無欠のタンパク質と採りあげられていました。
本のタイトルは忘れましたが、他のその手の本でも「生まれてくる栄養が凝縮されている卵は毎日食べても何の問題もない」と書かれていました。
長男にだけ食卓に卵がよく出ていて不満だったという患者さんの戦前の幼い頃の記憶を聞いて覚えていた僕は妙に説得力を感じてしまい、“じゃあ毎日2個ずつ1年食べたら血液検査にどう影響があるのか試してみよう”と思って実践してみました。
僕は年間350日程度仕事場に来ているので、そこでコーヒーの為にお湯を沸かす電気ポットで毎回2個のゆで卵を作って昼食時もしくは仕事の合間に食べることにしてみました(朝食は食べない習慣です)。
そして1年経った今年の国保検診の結果を比較してみました。
その結果です。
過去5年間の平均値、中性脂肪47.2mg/dl(以下全て同単位)が74(+26.8)に(正常値150未満、同年齢男性平均140)、LDLコレステロール89.8が98(+8.2)に(正常値120未満、同年齢男性平均130)、HDLコレステロール62.2が57(-5.2)に(正常値40以上、同年齢男性平均60)という結果でした。
これを見るとやはりいい変化とは言えないようです。特に中性脂肪は過去5年平均値比で157%。これはやはり毎日ゆで卵2個の影響なのでしょうか。
僕としてはそう結論せざるを得ません。厳密に云うと年齢とともに身体も変化していますし、その他様々な要素が絡んでいますので断定はできませんが食生活の基本は変わっていないでこの変化は確率的にはそうなのでしょう。
これで仕事場でのゆで卵を全くやめてまた1年、コレステロールの変化を評価したいのでキリのいい6月いっぱいでやめました。
しかし食習慣とは怖いもので1年間毎日(それも2個)食べていたらこれが当たり前になり食べないと物足りなくなっている自分がいるのです。
出産や更年期、退職などがきっかけで体重がじわじわと右肩上がりの患者さんに結局食べ過ぎの習慣なのだということを判った風に言っていた自分が、いざたった一年の2個のゆで卵も習慣化していることに少し驚きました。
1年経つうちに“トッピング“が「アジシオ」から納豆に付いてきて大量に余っていた「和からし」になり最終的には「行者にんにく醬油」にまで進化してすっかりコーピング(僕だけの小さな楽しみ)の一つにまでなってしまっていたのでした。
しかし、考えてみればこの『最強の食事』はこのシリコンバレーのストレスで太って慢性の体調不良になってしまった著者にとっては「15年30万ドル」かけて導き出したのかもしれませんが当然、単にお金と時間をかければ正しいという訳でもありません。
当人にはどれだけ「最強」でもそれは言ってみればたった一人の意見にすぎません。
また、ダイエットのためと健康のためでは求めているものも全然違います。人種が違うので食材を言われてもピンと来ないものも多々あります。
現代は手軽にたくさんの情報が手に入りますが、テレビやネットからのそういった情報については余程注意深く確認しなければ誇大表現で正確さに欠けていたりある側面しか捕えていなかったりという情報で溢れています。出版物もしかりです。
以前から言われていることですが、情報を疑う、取捨選択する能力がリテラシーとして問われてくると思います。
僕は半ばユーモア感覚で1年の期限付きでこのような実験まがいのことをしてみましたが、これにも客観的な検証、追試が必要ということでもあります。
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