症状が進んでしまって、あとから何とかしようというのは大変な努力が要ります。強い痛み止めの常用まで行ってしまう前に生活習慣の改善もしくは薬と併用でも鍼灸治療を選択していただきたい、というのを以前書きましたがそういった症例が多いので今回も書かせていただきます。
60代男性。以前からあった右腰下肢痛が強くなり2週間前に近所のクリニックでレントゲン撮影(±)、セレコックスを処方されましたが全く効かずに悪化、10日前に総合病院でのMRIの診断は脊柱管狭窄症でしたがその後さらに悪化、基幹病院にてリリカ、トラムセット、ボルタレン座薬の三点セットを処方され3日目の時点で不安を感じて奥さんを通じて出張治療の予約がありました。
初療時には歩行困難で薬も「全然効かないから」と服用していませんでした。次の日の2回目の治療後も変化がなく、上記三点セットの再開を指示しました。4日目(4回目)からトイレに行けるようになり6日目(5回目)からやっと局所(腰椎5番椎間)の過敏な圧痛が消失してQOLも改善してきました。
本人は「家族(奥さんと息子のお嫁さんが当院の患者)がやってなかったら絶対に鍼なんてやってないよ」といった通り、男性の多くは自らは鍼灸治療など考えもせず、傷んだ自分の身体に進退窮まってかなり遅まきながらやっと(しようがないから)文字通り重い腰をあげるのです(この患者さんの場合は整骨院→クリニック→総合病院→基幹病院→鍼灸院)。
これも繰り返しになりますが、当院に来る整形外科系の患者さんはトラムセット、リリカ、タリージェ、サインバルタなど処方されている方も何人もいて、僕がこのような強い疼痛対策の薬を敵視しているかといえばそうではありません。
これらの薬が時間稼ぎをしている間に鍼灸治療で対応する時間も生まれる、つまりオピオイド系鎮痛薬、SNRI服用は過渡期的な状態での助けであり、そこから離脱できるように鍼灸治療というもう一つの選択肢をお金はかかりますが試すことができるということでもあります。
今回の場合も鍼灸治療が改善に貢献したかどうかはわかりません。このような個別の一例の積み重ねでは永久にエビデンスにはなり得ません(原則的に鍼灸治療のランダム比較試験は無理だと考えています)。とにかく患者さんが改善することが目的で、それが全てです。
徐々に悪化し当初は強い鎮痛薬も効かなかったお陰で、しょうがないからとお鉢が回って来て効果を出せた(であろうと思っている)一例です。
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