ピロリ菌による萎縮性胃炎

医療トピックス

頚肩部の凝りや背中の張りと月経前症候群、アレルギー体質で皮膚掻痒を訴えて来院していた女性。

近所の小学校などでやっていた検診に代わって40歳の去年から船堀の江戸川区医師会医療検査センターでの区民検診になり、早速オプションの初バリウム検査を受けてみたら「がん以外の疑い」で引っかかり、後日精密検査の内視鏡などで萎縮性胃炎とピロリ菌感染を確認されました。

患者さんの中では最も若いピロリ菌感染者でした。データによる認識では70年代以降生まれは20%以下との事だったのでかなり意外でした。

除菌は2種類の抗生物質、アモキシシリン(サワシリンカプセル®)、クラリスロマイシン(クラリス®)とプロトンポンプ阻害薬(PPI)=ボノサップパックを1週間服用するだけ。(PAC)

4週間以降に糞便中抗原検査で除菌を確認します(75%の除菌率、3割負担で総額約1万円)。ダメなら薬剤を少し変えてPPIにアモキシシリン、メトロニダゾール(フラジール®)=ボノピオンパック(PAM)でもう一度という流れです(95%の除菌率)。ちなみに患者さんの中で2次まで行かれた方は今まで1人(81歳女性)だけでその方も除菌できました。

WHOも除菌による胃がん予防効果は青少年期で最も高く、加齢により低下するが高齢者でも効果はある、感染早期に除菌するほどピロリ菌感染によって起こる胃がんを確実に予防できると発表しています。(2014年WHO国際がん研究機関)

また2016年、「ピロリ感染の診断と治療のガイドライン」(日本ヘリコバクター学会)が7年ぶりに改訂されました。その中で、感染は先進国では家族内感染がほとんどで70%が母子、10%が父子感染で「我が国の主な感染時期は乳幼児期」とあります。

冒頭の患者さんもそうですが感染者の除菌後もある程度の萎縮性胃炎が進行しているため胃がんリスクが消失したわけではないので内視鏡等による経過観察が必須です。高齢になるほど胃がん予防に対する除菌の効果が弱くなるということを知っておくべきです。

前述したとおり除菌は若年期であるほど良いのですがスクリーニング検査に関して小学生以下は精度が低いので中学生以降であれば可能とされています。

日本では98%以上の胃がんはピロリ菌感染が原因であることが報告されているので未感染者の胃がんのリスクは極めて低いとも言えますが50歳以上の胃がんの死亡者はここ5年減少していません。その年齢層をフォローするためにもピロリ菌検査と胃粘膜の萎縮検査を併用すべきでしょう。萎縮性胃炎の指標であるペプシノーゲンの測定値によってリスクを層別化することができますし。

関連が推測されている疾患としてパーキンソン病、アルツハイマー型認知症、糖尿病なども記載されていました。この辺りはこれからのデータの積み重ね、研究に期待したいと思います。

余談ですが、バリウム検査は費用対効果で評価が劣るうえ、X線透視の為に被ばく量が多く(単純X線の150~300倍)、専門医研修は内視鏡のカリキュラムばかりですし、オトナの事情(医者と放射線技師のコストの差や既存設備の問題)を踏まえつつも将来的には胃の内視鏡に置き換わっていくのではないかと思っています。3年毎に1度程度の頻度での内視鏡検査になってほしいのですが・・・。

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