以前にスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』を取り上げた時にも書きましたが、スマホが近くにあると集中力が低下しパフォーマンスが落ちることが明らかになっています。
知らず知らずのうちにスマホが気になってしまい、時間があれば常にスマホを確認しなければ落ち着かないのです。
30代、40代の患者さんでも結構な割合の人が治療室を出る前にスマホの履歴を確認するのです。一対一の治療室内で私には無い感覚ですが、今の人は違うのかもしれません。
ハンセンはこのような新しい情報、次の更なる刺激によって報酬系神経伝達物質のドーパミンが放出されるために、それを求めてついつい気になって見てしまうのだと解説していました。
何か刺激になる情報(SNS、動画など)を求め、その度にご褒美(ドーパミン)をもらえるので手を伸ばさずにはいられなくなってしまうのです。
しかし、興奮物質に当たるドーパミンもずっと放出され続けるわけでもずっと同じ効果が続くわけではありません。若年層では特にスマホを使う時間が長くなるほどそれ以外の事をすることに対してしんどくなったり、気分が落ち込む割合が増してゆく傾向が指摘されています。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズが自分の子供にはスマホを規制したのもよく知られている事実ですが、その中毒性、危険さを経験上知っていたからでしょう。
『脳と身体を最適化せよ!~「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』(モリー・マルーフ著 ダイヤモンド社)でも最終章を 人間関係~スマホ中毒と孤独からの脱出 としてスマホを使わない人ほど幸福感が高いことを挙げています。
現実世界で生身の人とつながっていることが重要でそれが幸せホルモンであるオキシトシンを増やすのだと述べています(ドーパミンも幸せホルモンと言われていますがいわゆる報酬系、興奮系の幸せホルモンです)。
現代人は意識しないうちにスマホ一つで何でもできるとても便利な世の中に生きていると感じつつもその圧倒的高機能ゆえに情報過多に曝され、同時にその過剰刺激を自ら選択して却って生き辛くもなって苦しんでいるともいえるのです。
デジタルデトックスというと数日間程度のデジタル機器、情報のない生活をしてみようという感じで認識している方も多いかもしれませんが、それもまた非日常を味わう旅行とセットのような感覚で新鮮かもしれません。
しかしここまでデジタルツールで便利になった現代社会でスマホなしというのもあまりに非現実的だと思います。
私が思うのは必要最低限の道具としてのスマホを使うということです。寝室に持ち込まない、寝床で見ないなど人それぞれのルール、距離感が大切だと思います。
細かいニュースもいちいち取りに行かない、自分の周りの生活に逐一流れてくるニュースという名の質の悪い情報、誰かの動静なんてもうどうでもいいことなのです。
最近の言葉で言うとミニマリストと言うのかも知れませんが、持ちもの、着るもの、情報も今の半分、三分の一、十分の一でいいのかもしれません。
そうやって少し実践してみると、少ない荷物、少ない情報、少ない付き合いがシンプルで却って充実した気持ちのいい時間を過ごせることに気付くのです。



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