謙虚に患者さんと向かい合う

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以前に【謙虚に身体と向かい合うこと】というのを書きましたが、僕のもう一つの仕事、端的に云うと「患者さんの心の中の不満を聴き出してスッキリしていただく」の医師編の続きです。

パーキンソン病に伴う諸症状で来院している70歳代女性。皮膚科に足指の痛みで行ったところ組織を検査し白癬(水虫)と診断されました。

それで終わってしまうといつもの抗菌薬を出されるだけなので 「痛いんですけど」 と言ったところ、その皮膚科にありがちな3、40歳代位の女性医師が背を向けてカルテを書きつつ小さな声で 「水虫が痛いワケないじゃない…」 と言ったとのこと。

耳が遠いからと油断したのかもしれませんが、そういうつぶやきこそ聞き逃さないのです。

しかし、水虫だって痛みを伴うのもあるのは皮膚科医なら知らないはずはありません。見た目で無関係だと思ったにしても、白癬と関係の無い痛みかもしれませんし普通の医師ならそれを説明するでしょう。いくら虫の居所が悪いにしても。

平井駅前辺りにそんなアルバイト医師の皮膚科が三つもあるので  「で、別のクリニックに替えたんですか」 と尋ねたところ、  「替えなくてもあそこの(アルバイトの)医者はすぐに代わるから大丈夫」 と。負けていません。

長年腰痛症と不安神経症で治療している80歳代女性の話です。初期の緑内障とドライアイで眼科に通っているのですが、少し耳も遠く医師が何か尋ねたのですがよく聞こえなかったので二回ほど  「えっ?」 と聞き返したら不機嫌に 「なんだ、耳も悪いのか」 と言われたと。

 「もう、悔しくて」 と。でもこの医師はその後体調を崩したそうで早々にいなくなったそうです。患者の健康を思いやる、というよりも人としての思いやりの気持ちを持つ余裕も無いくらい体調が悪かったんですねと話を締めましたが。

『セクハラ・サバイバル 私は一人じゃなかった』(佐藤かおり著 三一書房)のなかでも派遣先上司からのセクハラでメンタル不調になった著者が受診した医師の信じがたい対応が挙げられています。

PTSDになった著者が訪ねた精神科で担当医師に 「知らない人に刺されたわけでもないんだから働けるでしょ」 と言われます。さらに、『質問にすぐに答えられずに考えていたら、デスクの上に積んであるカルテをポンポンとたたいて、「あなたの答えを待っているヒマはないの。こんなに患者さん、待っているんだから」。 精神科を標榜しているところでのあまりの対応にそこはすぐにやめました。』

もう一つの精神科でも『(略)次に代った医師が 「男性も悪い人ばかりじゃない。いい人もいるのに、男性が怖いというのは失礼じゃないか」 というようなことを言う人でした。(略)心療内科や精神科の医師だからといって、全ての医師がセクハラやトラウマ(心的外傷)について理解がある訳ではないと、つくづく思い知らされました。』

別の著書ですが、40歳で悪性脳腫瘍(グリオーマ)、42歳で悪性リンパ腫を克服した著者がその過酷な5年生存率をくぐりぬけてきた経験をつづった著書『治るという前提でがんになった』(高山智朗著 幻冬舎)で、医師に関して 「優秀な医師ほど主体的な患者を受け入れ、質問にしっかり答えてくれる」 と書いています。

これがまさに真理をついていると思います。ヒポクラテスの誓いではありませんが医師に限らず医療にかかわるものとしての当然の姿勢だと思います。

結局、どのような職業そして人間関係に関しても同様だと思うのですが、一人の人間として信頼、尊敬できるか、共感できるかが大事だというのは言うまでもありません。

稲盛和夫さんの発言に「謙虚さは魔除けだ」という言葉があったと思いますが、患者さんに寄り添う気持ちを基本に、症状に向かい合いたいと思います。

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