これだけ身体に悪いたばこが何故こんなに人々に広がったのでしょうか。
それはたばこが健康を阻害するものだと判ったのが思っているよりも最近のことだからなのです。それまでに一般庶民(多くの成人男子)に広がってしまい、そのままニコチンの強い依存性によって多くの喫煙者がニコチン依存症として定着してしまったという事実があります。
1960年代の男性の喫煙率は80%を超えていました。そこから低下し続けて現在は20%台半ばということです。
肺がんの原因であるとはっきり判ったのが70年前の1954年のことで、集団で統計学的に調べる疫学調査によって明らかになります。それまでは今では信じられないことですが「むしろ体にいいんだ」という説さえあったそうです。
事の発端は第二次世界大戦後のイギリスです。その頃、直近の20年で肺がんによる死亡者が15倍に増えていました。原因は何なのかと。
そこでイギリスの4万人の医師を対象として喫煙者と非喫煙者に分けて何人が肺がんで死亡するか調べたのです。すると喫煙者の肺がんによる死亡率が何と45倍も高かったのです。
それ以降数多くの論文や研究が発表され、あまりに恐ろしいたばこの有害性を明らかにしてきたので現代社会に生活する我々の多くは冷静にそれを理解しています。
70種類の発がん性物質を含み、全身に16種類のがんを引き起こす原因になっています。こと肺がんに関しては非喫煙者と比較して15~20倍なりやすく、寿命は10年短い、1本で寿命が11分短くなる計算です。
コカイン、ヘロインに比べると、煙草の依存性はより強く、身体への侵襲性はやや弱いとなっています。近くにいる人が副流煙にさらされる受動喫煙のリスクも明らかになっています。
長年にわたる喫煙で奥さんが肺がんになってからすっぱり喫煙をやめた御主人が近所にいましたが時すでに遅し、後悔しても奥さんの命は取り返しがつきません。
そのまた隣の人は家族に嫌がられるのか頻繁に外に出て吸っているのですが、あの定期的に流れて来るたばこの臭いも非喫煙者にしてみればとても不快で自宅内自室内で自己完結してほしいと強く思います。
ニコチン依存症の病的な症状を客観的に恐ろしく感じたのは、7年ほど前ですが二人のお笑いコンビがクイズに正解するまで外に出られないというテレビ番組の企画の中で、様々な飲食その他に使えるゲーム中のポイントをわざわざ食料ではなく1本のたばこに使って幸せそうに吸っているのを見た時です。
これぞニコチン依存症だという映像でした。血中のニコチン濃度が一定以下になると強い不快感を覚えて耐えられないのです。
漫画家のさくらももこの本で誰かとの対談を読んだ時、対談相手を前に「タバコ吸ってもいいですか」と許可を得ている場面があり驚きました。
あのほのぼのするエッセイを書く彼女も、かなり強度のニコチン依存症だったのが解ります。53歳で乳がんで亡くなってしまったのですが。
がんの発症は様々なリスク、その小さなピースの集積で最初はごくごく小さながん細胞ですが、そこからNK細胞が処理しきれず大きくなってがんが発症します。
長年に渡る過労働かそのストレスによる過度な飲酒、喫煙が細胞の遺伝子に傷をつけたであろうことは想像に難くありません。
参照:『すばらしい医学』 山本健人 ダイヤモンド社



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