前回の認知症の鍼灸治療についてのブログを読んだ方から問い合わせがありました。
その要点をざっくり言うと「その治療は効くのか」ということです。
それに対してざっくり答えたことを言うと「それはわかりません」ということです。
今世紀に入り製薬会社が多額の費用と時間をかけて開発に力を注いでいますが未だ根本的な治療薬はありません。
効果を期待されても治験で効果が認められず開発中止になってきました。
対症療法的な薬で国内で認可されているのはアリセプト、メマリーなど4つのみです。
前回書いた米国で話題のレカネマブでも18カ月で27%抑制、つまり認知症の下り坂が3割弱緩やかになる程度なのです。
そして、使うにあたって高価な検査が多く薬も高価なのは前回書いた通りです。
しかし下り坂がより穏やかになることによって介護を必要とするまでの時間を先延ばしに出来たり、家族と過ごせる時間が長くなったりというメリットがある(かもしれません)。
エーザイのCEOが言うには「標準治療と比較して疾患の進行を平均約3年遅らせると推定される」ということですが。
この特例的に米国で認可された最先端の研究で開発した最新の薬でさえ上手くいってこの程度(の期待)なのです。
そのような結果を出しにくい認知症治療の分野の最先端でこの程度なのです。この同等以上の効果を鍼灸に期待するのは荷が重いと思います。
しかも軽度認知障害の人限定の治験の結果です。
鍼灸治療とは全く違うアプローチですし、こちらは薬と違って効果を統計で立証できません。
鍼灸治療に関しては施術者個人の考え方、技量に依存する部分がとても大きいからです。
これは以前、サイモン・シンの『代替医療のトリック』(現在は「代替医療解剖」新潮文庫)という本に対する反論でも書きましたが。
こればかりはいくらジャーナリストに批判されようが鍼灸の良さを解ってくれる人がいればそれでいいのです。
本人にとって体にいいと感じられるものは科学や理屈ではなくてあくまで個人的な体感でしかないからです。
事実これだけ自費治療の鍼灸院や整体院が存在するという事実が消費者(患者)に求められているというエビデンスでもあります。
生まれた以上は必ず歳をとり死んでいく運命です。しかし体のケアに気を使う人は当然ながら心身とも(もしくはどちらかかもしれませんが)健康である確率が高いでしょう。
同じ道具でも大切に使われた道具の方が長持ちするのは当然のことです。
人間の体も同じだと考えています。
是非信頼できる治療院、治療家を見つけて愁訴や気になることを相談していただきたいと思います。
そして出来れば何回か通ってすこしでも体の反応、変化を感じていただきたいと思います。
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