41歳で脳梗塞を経験した鈴木大介氏の著作2冊について以前【執着はしんどい 寛容編】と【本人が辛いといったら辛いんです!】でいろいろ考えましたが、著者も書いていた「体験してない人(つまり医者)が症状を書いた本はたくさんあるが当事者が書いた本が殆どない」と言うのが気になり何冊か探してみました。
中でも示唆に富んでいたのは37歳で先天性の脳動脈奇形(AVM)により左脳出血を起こした脳神経解剖学者ジル・テイラー「奇跡の脳」(竹内薫 訳 新潮社)でした。
やはり共通するのは病院関係者への理解の無さというか、当事者にしか解らない感覚、気持ちを訴えています。
『医師たちは、私の脳が彼らの基準や予定表に従って機能しているかどうかではなく、私の脳がどのように機能しているかに注意を向けて欲しいと思いました』
『「脳卒中の後、六か月以内にもとに戻らなかったら永遠に回復しないでしょう!」耳にたこができるほど、お医者さんがこう口にするのを聞いてきました。でも、どうか、私を信じてください、これは本当じゃありません。』
これは鈴木大介氏の妻も総括で書いていたことと全く同じです。脳神経科の医者がわかったつもりで答えた(少なくともこの2例では不正解の)知識が患者や家族を傷つけます。
そして後半では健常者には当たり前の日常が本当は当たり前じゃないということ、に気付くのです。
『細胞たちが元気で完全に調和しながら働いていることに、感謝しています。そうすることで、細胞たちが健康をもたらしてくれるのだと信じているから。1日の始まりと終わりに、わたしはきまって枕を抱きしめて手を合わせて、次の新しい日を迎えられることを、自分の細胞に心から感謝します。これはとても大切なことだから、「みんな、ありがとう。新しい明日を迎られることに感謝しています」と、声に出して、深く感謝の気持ちを感じながら語りかけるのです。』
『もう一度、深呼吸して。そして、もう一度、カラダをリラックスさせて、顎を緩めて、眉間のしわをなくしましょうよ。この瞬間あなたは生きている、成長している人間だということを、受け入れましょう。祝福と感謝の気持ちで意識を満たしましょう』
『謙虚な気持ちで、平和に恵まれた状態に変えるために、私が発見した最も簡単な方法は感謝すること。感謝の気持ちを抱くだけで人生はすばらしいものになるのです。』
この様に脳神経科学者本人が左脳の機能が大きく損なわれたことによって体験した右脳中心(本書の中では「右脳マインド」)の感覚的あるいは神秘的な物事の感じ方に心の安らぎを見出しています。
発症から手術に至る経過を書いた前半部分と、この後半の内容の転換にあとがきで訳者も危惧していましたが脳卒中を経験したことのない人、特にエビデンスの世界に生きる医療関係者などはトンデモ系だと嫌悪感を覚えるのかもしれません。でも、この後半部分を読んでいて僕は左脳=西洋医学、右脳=東洋医学なのだなと感じました。
『ほんの一例ですが、レイキ(霊気)、風水、鍼灸の技術や瞑想がうまくいく理由は、医学的には謎のまま。これは、いかに右脳が機能しているかという事実に左脳や科学が未だに追いついていないからでしょう。』
神経解剖学者自らが、神秘体験にも脳科学的な根拠があることを「体験によって証明」したという意味でこれまでタブー視されてきた領域にも立ち入った本書は評価されるべきだと思います。なかなか理解してもらえないでしょうが・・・。
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